交通事故の三悪とは

交通三悪の事件とは何でしょうか。なぜ交通三悪の事件は重く処罰されるのでしょうか。どんな点に問題があるとされるのでしょうか。具体的な面ではどんなことが起こっているのかを、考えてみましよう。
 交通事故の三悪とは、無免許運転による事故、酒酔い運転による事故、ひき逃げ事故の三種か、あるいはひき逃げの代わりに速度違反による事故をあげています。このいずれもが道徳的にみてもきわめて悪質なものであり、誰もが批判と憎しみをもつ事件です。したがってこれに対する処分は当然に厳しいものになってきます。
 なお、これに次ぐものとして、信号無視、標識違反、横断歩道上の事故があげられます。これらはおおむね示談ができていても、執行猶予の判決はつけられず実刑になることが多いのが実情です。

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まず無免許運転ですが、これの内容も多様です。二輪免許をもっていて四輪の無免許運転をした場合、大型特殊車無免許の運転をした場合、試験に合格したが免許証の交付を受けないうちに運転をしてしまった場合、免許の停止中や取消直後の無免許運転の場合など、その危険性や違法性の内容は多様的です。
 したがって、これに対する批判も、反社会的な面からの批判、危険性が大であるという面からの批判という二つの面からなされることになります。
 地方裁判所に公判請求される無免許運転による事故事犯の大部分が、運転技術ないし運転感覚についてきわめて貧弱なものしか身につけていないケースであって、社会的危険性の高いものがあげられています。道路標識の判別もできないもの、障害物発見の場合でも、路面の状況などの要素も考えずに、なんでもブレーキを路んでしまうもの、ブレーキペダルとアクセルペダルを踏みまちがえてしまうもの、技術や状況判断の理解度の不足のもの、確認能力の不十分なものなどが、路上にでて車を運転しては危険性は著しいわけです。しかも世論のはげしい批判がたかまっているのに、逆に無免許運転による事故は年々増加していると言われております。
 また、制動能力について個人差があるため、免許取得者の空走距離(反応時間)は〇・五三秒ないし〇・六七秒であるのに対し、無免許者の場合は〇・五四八秒ないし〇・八九二秒もかかり、時速四〇キロメートルのときでも一メートル以上の制動能力の差がでてくると言われています。
 次に酒酔い運転による事故の事案についてですが、これもほぼ同様の理念が適用されます。アルコールの保有度についての検査方法については北川式検知管による方法がとられております。特殊な検査方法としては眼球運動検査法、飲酒実験法などがあり、多くの研究がすすめられています。
 酩酊の度合と運転に及ぼす影響は、保有度に必ずしも比例するとは言えません。個体差によって著しく異なることは、平素の飲酒状況によりよくおわかりのとおりです。
 また同じ人でも、飲酒時の健康状態、雰囲気、食事との関係でも異なってくることも一般に経験するところです。一合でも、飲んだ時と場所によって快く酔うこともあり、まったく酔わない場合もあります。
 そのため、アルコールの体内保有度についての数値は争わなくとも、それによって車両等の正常な運転ができないおそれのある状態にあったか否かが、公判廷で争われ、法医学者等の鑑定が求められることがあります。しかし、研究の結果によると、ハンドル操作能力や速度感覚においては正常運転の場合と変化がなくとも、信号の錯誤とか路上放置物件の見落としなど一〇%程度の危険が増加すると言われています。さらに感覚能力が麻痺し、遂に運動能力が増大するという現象があり、事故発生の可能性を濃くします。
 事物を完全に把握認識して行動に移るのが通常ですが、アルコールによってこれが逆になり、判断の前に行動が先行してしまう傾向となるため、高速な自動車をして容易に事故発生に結びつけてしまう結果となります。
 ひき逃げ事件については、前に説明したとおりです。その場から逃げだしたいという加害運転者の気持は誰でももつものですが、被害者の救済のためにも、再度の事故発生の防止のためにも、その場を去ることは絶対に避けなければなりません。ひき逃げ犯専門の捜査班が各県の警察にも設置され、現場に残された遺留品や、路上に残されたタイヤ痕などから科学的に加害車両の割り出しが可能となってきています。
 事故現場に残された車内検査証のステッカーの一部分から遂に割り出されて逮捕されたケースがありました。これは一センチに四センチ程度の紙片でしたが、この紙片が加害車両のナンバーを確定させてしまったのです。
 もともと逃げるということは、過失ではありません。知っていてやることすなわち故意なのですから、これに対する社会の非難は厳しくてあたりまえです。起こしてしまった事故はとりかえしがつきません。さらにこの責任をみずから重くすることのないように留意し、ともすれば逃げようとする気持をしかって、事故に対し冷静に対決し、事後の紺屋の万全をつくすことです。

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