取り調べられるときの運転者の権利

取調べられるときの加害運転者の権利は憲法に定められてあるとおりです。国民の基本的人権は、いかなる凶悪犯であっても認められなければならない鉄則です。義務 を守るとともに権利も主張しましょう。
 交通事故の場合であっても、殺人や傷害の犯人であっても、取調べにあたって被疑者として扱われ、憲法や刑事訴訟法で定められている権利を有していることは同じです。そこで被疑者に与えられている基本的な二、三の権利を検討してみましょう。
 何人も取調べにあたって、言いたくないことは言わなくてもよい権利があります。これを供述拒否権、黙否権などと呼んでいます。加害者である運転者もこの権利を有しますから言いたくないと思ったら黙否権を行使することができます。したがって、警察官が偏見を有しているときとか、いかに真実を述べても聞いてくれないようなときにはこの権利を行使したらよいでしょう。ただ頑固にこの権利を行使しますと、取調官の反感を増し、かえっていやがらせや不利益な取扱いを受けるおそれもありますので、この行使にあたっては慎重に利害得失を考慮したければならないと思います。
 なお、黙否する権利はあっても、うそを述べたり証拠を偽造したり、替え玉犯人をつくったりすることはできません。このようなことをすると刑が重くなったり、他の犯罪に該当してしまいますので、注意してください。

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加害者であるからといって、直ちに逮捕されたり身柄を拘束されることはありません。裁判官の発行する令状がなければ、現行犯の場合を除いて警察官が逮捕する権限はありません。また呼出状に応ずる義務もありません。逮捕状、勾引状、勾留状がでていない限り、自己の意思に反して自由を拘束されることはありません。
 もっとも最近では、呼出しに応じないと逮捕状を請求し、あるいは結果が重大であるとすぐに現行犯として逮捕するなど、現状はやや強制権が乱用されている傾向がないわけでもありません。
 被疑者はいつでも弁護人を選任する権限があります。なお、貧困その他の場合でみずから弁護人を選任することができないときは、国選弁護人を選任してもらう権利もあります。もっとも国選弁護人は起訴されてからで、捜査段階では選任されませんので、この場合はみずからの費用で選任しなければなりません。
 弁護人の選任は、被疑者本人だけでなく、親族もできます。被疑者の場合は三人に限定され、それ以上の場合には裁判所の許可を要することとなっています。弁護人の報酬等は、いわゆる老大家は比較的に高額で、若手が低いのが一般のようです。交通事件は、車の構造や、運転関係者の心理など、比較的新しい分野ですし、現場の検討など、足で調査するのが特徴ですから、若手の弁護士を弁護人に選任するのもよいかと思われます。

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