刑事処分の内容はどうなっているのか
刑事の処分は、科料、罰金、禁錮、懲役の四つの刑に分けられます。処分に対して執行猶予という宣言があると、刑の執行を一定の期間受けなくてもよく、期間の経過によって前科にもならないことがあります。
公判における審理が、検察官の起訴状朗読にはじまり弁護人の最終弁論によって終わると、裁判所の判決ということになります。判決はまず有罪と無罪、免訴、公訴棄却などに分けられます。免訴や公訴棄却などは手続き上の問題に対してなされる特殊な場合ですから、通常は有罪と無罪のいずれかです。もっとも無罪になるのもごく限られています。
有罪の事件についてはさらに刑が量定されます。これを軽い順序にいうと科料、罰金刑、禁錮刑、懲役刑です。裁判所は判決のなかで、この刑をどれにするかを選択し、さらにそのなかで罰金の金額や懲役の期間を定めます。
科料と罰金刑は、一定の金額を罰として国に納入させる処罰です。科料は四〇〇〇円未満、罰金はそれ以上です。これらを納入しないときは、強制執行により財産を処分されることもありますし、労役場に留置されることもあります。
懲役刑と禁錮刑は、刑務所に服務させ、自由を奪って強制力を行使し一定の労役に服させ、あるいは教育する刑で、体刑と呼んでいます。このうち懲役刑は一定の労役を課せられ、禁錮刑は本人の希望によって労役に服するという違いがあります。
起訴されてから裁判確定までの間、身柄を拘束されておりますと、その未決勾留中の日数をこの体刑のなかに算入することもあります。たとえば、勾留日数六〇日のうち五〇口分を懲役一年のなかにくり入れるというようなことです。
交通違反者のうち体刑を受けたものがすべて交通刑務所にはいるというわけのものではありません。初犯でしかも刑期が比較的長期の服役者のうちから、成績のよい者だけが選ばれて交通刑務所にはいり、その他の者は一般の刑務所に分散して服役させられているようです。
なお、裁判の進行中は、保証金を供託して保釈してもらい自宅に一時帰してもらえるという制度もありますが、刑が確定しますと、いくら金を積んでも服役を避けることは許されません。判決により刑が確定しますと、どんなに社会的地位があっても刑務所にはいらないわけにはいかなくなります。
したがって、有罪となり体刑(禁錮とか懲役)を言い渡されますと、たいへんなことになるわけですが、法はこの場合の政策として執行猶予という制度を設けております。一定の期間を定めて、その期間中は刑の執行を猶予し、期間経過後は刑に服さなくともよいとする制度です。
裁判所が五年の範囲内で、刑の執行猶予の期間を定めた宣言を付しますと、被告人はその期間中刑の執行を受けることはありません。その期間中に新しい事件や違反をしない限り、服役しないことになるばかりか、判決の言渡しの効力は期間の経過によって消滅し、前科にもならないことになります。
事件によっては、執行猶予とともにその期間中保護観察の処分を付し、保護司による指導援助を強制することもあります。
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