起訴、不起訴処分について
事件についての捜査が終わりますと、検察官によって処分のふるい分けがなされることになります。起訴や不起訴の決定です。どのような場合に起訴処分となり、どの
ような場合に不起訴処分となるのでしょうか。
検察官は、事件に必要な捜査を終えると、その事件についての処分決定をします、これを事件処理と呼んでいます。事件処理は、大別して起訴、不起訴に分けられます。
起訴処分(公訴提起)される場合、検察官が裁判所に訴を起こしてその処罰を求める処分で、具体的に申しますと、裁判所に「起訴状」という書面を提出するごとによって行なわれます。裁判所は起訴された事件を審理し、被告人が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合は、検察官の求刑を参考にして、情状にもとづいて刑の量定をなし判決を言い渡します。公訴の提起のなかには、公判での審理や裁判を求めるもの以外に、略式命令や、即決裁判請求を求めるものもあります。
交通事故のうち悪質なもの、結果の重大なものについては公判請求が、過失の程度も軽微でしかも結果も小さいもの(一ヵ月以下の人身事故)などについての交通事故や、単純な道路交通法違反事件については略式命令で処理されております。
不起訴処分される場合、公訴を提起せず処罰しないですます処分を、不起訴処分といいます。これには種々の内容の不起訴処分がありますので、以下順に説明してみましょう。
事件が犯罪とならない場合、加害運転者が調査の結果、一四歳にもならない者であることがわかったとか、判断能力のなかったような場合、道義的にはけしからん行為であっても、法律的には刑事責任を追及することができない場合などがこれです。決定主文には、「罪とならず」「刑事未成年」「心神喪失」とされるものです。これらは、犯罪として成立しないのですから当然に不起訴となります。
事件について犯罪の立証ができにくい場合、被疑者が有罪であると認められるだけの証拠がない場合、もしくは証拠が不十分な場合です。いろいろと捜査しても証拠がなければ、裁判では無罪となってしまいますので、このような場合には不起訴となります。ひき逃げ事件とか、交差点内の事故の場合など、このケースが多いようです。決定主文は「嫌疑なし」「嫌疑不十分」とされています。
刑の免除、法律上の免除事由が規定されている場合です。しかし、理論上はおもしろい分野ですが、交通事故の分野では考えられるところは少なく実務でもあまり例がありません。
起訴猶予、加害運転者にとってはたいへんにありがたい処分ですし、検察官の刑事政策的考慮と判断が支配する重要な処分です。起訴猶予とは、捜査の結果、被疑者が犯人であると言える明らかな場合であっても、犯人の性格、年齢、境遇、前科、前歴、犯罪の軽重、情状、示談弁償経過、誠意、努力、再犯の危険性等いっさいの事情を総合して判断して、被疑者を起訴する必要がないと判断される場合には起訴せず、処罰しないということです。
この決定権は検察官の裁量にまかされております。したがって検察官の判断がたいせつになりますが、先にも述べたように、検察官一体の原則により、処分基準はほぼ一定しており、検察官の個人差の生じないよう運営されています。
交通事件については、社会の要請から起訴、不起訴の判断に厳しい姿勢がうちだされており、不起訴のうちとくに起訴猶予処分については、しだいに認められる範囲が狭くなりつつあります。
検察官の起訴がありますと、その当否についての争いは裁判所に移ります。また不起訴となりますと、加害者は刑事処分を免れることになります。ただ、これに不服な被害者らは、裁判所の検察審査会などに不服を申し立てることができることになっています。
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