弁護人の選任の仕方

刑事の裁判では弁護人が重要な役割をはたします。弁護人はどの段階で、どのように選任したらよいでしょうか。費用はどのくらいかかるものでしょうか。国選弁護人 でも十分な弁護活動をしてくれるのでしょうか。
 刑事弁護人は、に私選弁護人と国選弁護人とに区別されます。両者の差異は選任の方法とその費用の支出先にあるだけで、弁護人の権限も義務もまったく同一で、なんらの差異もありません。かつて国選弁護人については何かと不信や不満もありましたが、弁護士の社会的正義と人権のための職業意識は強く定着しており、心配はまったくありません。
 弁護人をいつ選ぶかは重要な問題です。被疑者段階で選任するのは私選弁護人ですが、この段階での弁護人は重要な役割を果たしています。とくに被疑者が、身柄が拘束され取調べが進行している時は、精神的にも肉体的にもまいっているのが通常です。このような場合には、時として捜査官の厳しい追求から一刻も早く解放されたいと思う気持から、不本意ではあっても捜査官の求めるがままに供述してしまう傾向があります。
 ですから早目に弁護人がつくことは、弁護人との面会により心理的圧迫を軽減し、黙否権のことや諸手続き上の権利を知り、あるいは、事件の見通しや問題点が明らかとなるなどの利点があります。無駄な心配や神経をすりへらすことが、少しでも楽になるだけでも被疑者にとっては有益です。また事故現場の証拠の収集、関係者との事情聴取、示談折衝や指示なども弁護人の役割として忘れることはできません。さらに、事件によっては、起訴、不起訴の権限をもつ検察官に対する折衝や説得によって不起訴処分を求めることもあります。処分決定前に、被害者側の過失の資料、示談書、領収書、被害者側からの嘆願書など、被疑者にとって有利な資料が検察官に提出されることは、処分に影響を与える重要なことだからです。起訴前の弁護活動には、期待すべき多くのものがあります。

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弁護人を選任することのできる者は、被疑者、被告人、父母、保佐人、配偶者、兄弟姉妹などです。選任には弁護人選任届という所定の用紙に、選任者と弁護人双方が自署押印し、起訴前なら検察庁に、起訴後なら裁判所に提出することになります。なお被疑者、被告人以外の者が選任した場合には、身分関係等を明らかにするために、戸籍謄本などの提出が求められることもあります。
 弁護費用は、被疑者または被告人の経済能力にも関連します。弁護を依頼するときに実情をよく説明して、着手金、成功報酬の額をはっきりと約束しておき、後日になってつまらない誤解や紛争を生じないようにしておきたいものです。
 国選弁護人の付される場合としては、貧困その他の事由で弁護人を選任することができないとき、法律で定めた一定の犯罪事件について弁護人がついていないとき、未成年者、老人などの場合に、裁判所が職権でまたは請求によってつけております。業務上過失敗死傷の事件は、弁護人なしでは法廷を開くことができない事件とされております。
 この国選弁護人の費用は、訴訟費用の一部として国が弁護人に支給します。裁判所が事件について有罪と認定した場合は、被告人に費用の全部または一部の負担を命じます。この際被告人に資力がないと認めたときは、支払いを免除することもあります。

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