罰金刑の執行はどうするか
罰金刑が確定すると後は検察官によって執行されます。罰金を納めないと差し押えられたり、労役揚に留置されます。労役揚には一日数五〇〇〇円位の割合で換算された期間入れられます。早目に納入したいものです。
交通事犯の刑は、懲役刑、禁錮刑、罰金刑の三種に大別することができます。刑罰の執行は、裁判手続きが終わって有罪の裁判が確定すると行なわれます。裁判の確定というのは、控訴、上告等の異議申立てのできなくなった状態を言います。不服申立ての余地がなくなってから、刑が執行されるわけです。この執行には、裁判所は関係せず、検察官が主体となって、指揮監督権を行使します。
そこで、まず罰金刑を考えてみましょう。罰金刑は四〇〇〇円以上となっています。科料は四〇〇〇円未満のものを言います。いずれも、所定の金額を検察庁へ納めることになります。懲役刑や禁錮刑には、第三者を代理として服役させることはありませんが、罰金は、誰から金が出されてもかまいません。そのため、罰金を会社で払ってやるとか、運転手の共同資出金を積み立てておいてこれを払うとかといった、タクシー業界の話題も、時には聞くところです。しかし、刑罰は処罰とともに、再犯の防止のためにあるのですから、これは本筋を誤ったものと言わざるをえません。
罰金の納付については、検察庁から被告人に納付するよう納付告知書が送達されます。直接検察庁の窓口に持参してもよいし、郵送してもかまいません。高額のため、即金で納入することが困難なときは、分割納付や納付延期の措置もありますので、執行係の係員に事情を説明して、許可をもらうよう申請することが必要です。この申請もせず、納付もしないときには、検察官から督促状が発送されることもあります。
罰金を納付しないと、検察官は財産に対して強制執行をなし、財産を競売に付します。違反者が死亡した場合は、遺産に対しても強制執行が行なわれることがあります。しかし、財産が相当にあるとか、罰金額が多額である場合を除いては、強制執行はあまり行なわれず、労役場留置の方法がとられるのが通例です。
労役場留置というのは、監獄に付設された労役場に罰金未納者を拘束し、ここで受刑者と同様に労役に服させ、罰金額相当の労働を強制することになります。一日あたりをいくらに換算するかは、裁判所が罰金刑を宣告するときに、同時に決定し、ふつう、判決では、「被告人を罰金二万円に処する。被告人が罰金を完納することができないときは、一日五〇〇〇円に換算した期間、被告人を労役場に留置する。」としています。だいたい、一日あたり、五〇〇〇円前後に決定しているようです。なお、罰金については二年、科料については三〇日の範囲をこえて、労役場に留置することは許されておりません。しかし、罰金刑を軽く考えて、借金程度にあまく扱って横着をきめこみ、労役場に留置されてから青くなり、あわてて罰金を納めた事例が時おり散見されます。早く納めて、反省の決意を新たにしたいものです。
刑の執行は裁判の確定を前提とすると述べましたが、罰金利では仮納付という制度があって刑の確定する前に納付させることがあります。この決定がありますと、直ちに執行となります。仮納付の制度は、判決の確定をまっては、罰金の執行が不能またはいちじるしく困難となる危険があるときに、あらかじめ命令しておくものですが、最近では、事務合理化にも利用され、交通切符や、在庁略式命令などに利用されています。
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