公判廷にのぞんでの態度
公判が始まりました。公判には早目に、清潔な服装で、おちついて出廷しましょう。裁判官に悪い心証を与えないよう言語や態度ははっきりと、簡潔に、誠実にしましょう。真実と、誠意と、反省が基本です。
公判の進行経過のあらすじについては、すでに説明したとおりです。そこで前述に述べたような準備をすませ、いよいよ公判の法廷にのぞむことになります。日時は厳守しましょう。在宅事件ならば、弁護人と打ち合せて早目に法廷につくようにしましょう。最近の交通事情の悪化から、自動車ですと予定の時間までにつかないこともありますし、駐車場をさがすのに困ることもありますので、電車を利用したほうがよいでしょう。
服装はとくに新しいものでなくてもよいのですが、清潔なきちんとしたものにしたいものです。服装の、人に与える第一印象というものは貴重なものです。法廷で見ていますと、どんなに隠そうとしていても祖業の悪い人はそれらしい服装をしていてすぐにわかります。だらしないなげやりな服装ですと、それだけで注意義務をつくしていない不誠実な人間という印象を与えてしまいます。紋付羽織、袴を着用しなければ法廷にはいれなかった時代もありましたが、要は人に不快な感じを与えないことです。
法廷には開廷時間より三〇分くらい前にはつきたいものです。法廷の入口には法廷の番号と裁判官、書記官、検察官の名前とともに、被告の氏名と事件名が書いてありますので、そのなかにはいり、廷吏に召換状を渡しておきます。公開の禁止されている事件でない限り、他の事件の傍聴ができますから、別の事件を傍聴して気分をおちつけ法廷になれるようにしておくことも役にたつことです。
公判がはじまりますと、被告人は裁判官の正面に設けられた証言台の前に起立することになります。被告人から見て左側が検察官、右側が弁護人席です。事件の審理中は、被告人は裁判官の真正面の席か、弁護人席の前に椅子が与えられます。
法廷内の発言は、ゆっくりと大きい声で、わかりやすく、短くするのが理想的です。簡潔に無駄なことを語らないように注意するとともに、萎縮してしまうことも禁物です。裁判官に事実をわかってもらうとともに、自己の性質、人柄をわかってもらうことも必要なことだからです。また書記官や速記官が発言を調書に記載しますので、記録しやすいようにもしなければなりません。
被告人は裁かれる者として緊張感や無力感を強く感じられるかもしれませんが、それは誰も同じことなのです。自己を卑下することはありません。はきはきと答えることが好感をもたれることにもなります。
なお、証人調べ等で被告人は弁護人とは別に、みずから質問することもできます。しかし、素人の本人自身の尋問というものはあまり効果をあげていませんし、かえって感情を刺激して不利な事実をひきだしてしまったり、裁判官の心証を悪くしてしまうことのほうが多いようです。この点は、専門家である弁護士にいっさいをまかせておくほうがよいと思います。それには有利、不利にかかわらずいっさいの事情を弁護士に話して、弁護士をして十分な弁護活動ができるように準備しておくことです。
公判は二回くらいの審理で終わるのが通例です。この審理にいっさいを階けることになります。公判審理を通じて言えることは、真実に対する尊重と、被害者に対しての誠意ある謝罪の意思と、再びあやまちをくりかえさないという反省につきます。十分な反省と懺悔の気持が重要であり、それが裁判官を動かし、量刑にも影響を与えるものといえます。
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