即決裁判手続きによる処罰

東京墨田簡易裁判所などを中心に、即決裁判という迅速な手続きで交通違反に対する処分がきめられています。公開の法廷で、違反者の意見や不満も聞き、その場で判決言渡しとなる制度です。略式手続含とはどこが違うのでしょうか。
 即決裁判手続きは、交通違反事件について迅速適正な処理をはかるため、警察官の取調べから裁判宣告までの手続きを、原則として一日で済ませる方式のものです。公開の法廷は通常裁判官と裁判所書記官が列席して聞かれますが、場合によっては、検察官および弁護人も期日に立ち会い、意見を述べることができます。裁判は検察官の差しだした書類、証拠物および法廷において取り調べた違反者の陳述などの資料にもとづいて判決が宣告されます。この点がもっぱら書面審理だけの略式手続きとの大きな違いです。即決手続きは公判で、被告人はもちろん、必要なら弁護人までが事件について陳述する機会が与えられていますので、不服な点などを主張できます。

スポンサーリンク

つぎに即決手続きと略式手続きとの異同について述べます。まず、両者とも二〇万円以下の罰金または科料に処すべき事件を対象している点では同じですが、即決手続きは交通違反事件に限られているのに対して、略式手続きはそれに限らず交通事故事件をも対象とします。
 その他、略式手続きにおける命令は、原則としてその請求があってから一四日以内にこれを発しなければなりませんが、即決手続きは前にも述べたように請求があった日に期日を開いて審判するたてまえです。
 検察官は交通切符によって事件が配点されると、違反者の起訴、不起訴を決め、起訴するとなると違反者に対し、略式手続きまたは即決手続きによることについて異議があるか否かを確かめてから以上述べた手続きにはいっていくことになります。
 なお、違反現場で警察官からわたされる交通切符(甲)第一枚目裏面には、略式手続き、即決手続きがどんなものであるか簡単に説明が書いてあります。
 交通切符制度は略式命令の一つの型です。昭和三七年ごろに至って全国裁判所の受理した事件が三〇〇万仲合に達したことから、事務的な能率をはがるために考えられたのが交通切符の制度です。正式には「道路交通法違反事件迅巡処理のための共用方式」と呼ばれ、最高裁判所、法務省、警察庁の三者協議して成立したもので、昭和三八年一月一目から実施されています。
 警察、検察庁、裁判所の各段階においておのおのに交通違反事件について必要書類を作成していたのを、すべて一組の書類にまとめ、共通部分を複写方式で一度の記載ですませるように工夫し、各庁で必要とする書類の形式を簡単でしかも定型化したものです。そのうえ、審査も同一の目時に同一の場所に警察、検察、裁判所の三者が集まり、流れ作業方式で一箇所ですべてがなされるという運用が行なわれております。
 交通切符の制度は、甲と乙の二種類に分けられております。甲は一般的に使用されているもので、当初から刑事手続きを求める予定ですすめられてきたものです。乙は、後に述べる反則手続きをすすめながら途中で刑事手続きに移行する事件です。
 これらは、まず事件現場で事件を知った警察官が、違反事項や身分事項を特定してこれを切符用紙に記入し、違反者に署名押印を求めます。これと同時に免許証の提示を求め、保管し、違反者に出頭の日と場所を告知します。違反者が指定の時間に指定の場所に出頭しますと、警察官の再度の調べがあり、検察官の窓口にまわされ、ここでもう一度事実聴取をなし、略式手続きまたは即決裁判の告知がなされます。ここから書面が裁判官にまわり、罰金刑が決定しますと違反者に罰金額を記載して切符が交付されます。違反者はそこから再び検察庁の窓口に移り、そこで罰金を納付します。罰金の納付が終わると、警察官の窓口から保管中の免許証が返還となります。
 この間の時間は裁判所によって差異はありますが、おおむね二時間くらいの経過でいっさいの審理と手続きが終わります。また違反の日から呼出しまでは、一週間以内であるのが大部分です。

交通事故を起こすとどのような問題が生ずるか/ 交通事故と刑事、民事、行政上の責任/ 交通事故から処罰までのあらまし/ 交通事故現場でとるべき措置/ 被害者の救護義務とは/ 交通事故の報告義務を怠った場合/ 交通事故での替え玉の刑事責任/ 物損事故のときの措置/ 取り調べられるときの基本的な態度/ 取り調べられるときの運転者の権利/ 現場検証とそのやり方/ 供述と調書がくいちがった場合の対策/ 被害者にも過失がある場合の供述の仕方/ 交通事故の証拠保全の仕方/ 検察官の取調べのポイント/ 起訴、不起訴処分について/ 不起訴処分に被害者が不服のとき/ 身柄を拘束されるのはどのような場合か/ 逮捕勾留の手続きと対抗法/ 逮捕勾留に対する防禦の仕方/ 拘束されている人への面会や差入/ 保釈の手続きと保釈金額/ 刑事責任と示談との関係/ 示談はどのようにして進めるか/ 示談の履行の仕方/ 嘆願書、上申書と刑事処分の関係/ 略式命令による処罰/ 即決裁判手続きによる処罰/ 交通反則通告制度/ 裁判手続きはどのようにして進められるか/ 弁護人の選任の仕方/ 公判準備はどのようにしたらよいか/ 公判廷にのぞんでの態度/ 刑事処分の内容はどうなっているのか/ 量刑を左右する事情/ 少年の交通事故と家庭裁判所/ 罰金刑の執行はどうするか/ 懲役刑、禁錮刑の執行/ 故意犯と過失犯の違い/ 業務上過失犯とは/ 交通事故と信頼の原則/ 交通事故の三悪とは/ 被害者や第三者に過失がある場合/ 歩行者の飛出しで対向車に衝突した場合/ 自動車の故障による事故/ 交差点内の直進車の事故/ 交差点での右左折車の事故/ 車の死角と運転手の責任/ 無免許者に運転させた者の責任/

       copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved

スポンサーリンク