逮捕勾留の手続きと対抗法
自由を奪われ、留置されることは、加害者のみならずその家族にとっても苦しいつらいことです。逮捕や勾留はどんな場合に、どのような順序や手続きですすめられ ていくのか、また、その対策を考えてみました。
逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の三種類があります。
現行犯逮捕は、事件と同時に逮捕されるもので、裁判官の令状は不要です。現行犯とは、現に罪を行ない、または行ない終わった者をいい、さらにこれに準ずる準現行犯も含めます。交通事件にあっては、次のケースが一般に多いようです。
犯人として追呼されているとき、誰何されて逃走しようとしているとき、身体または被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、盗んできた車両、あるいは事故で破損した車両で進行しているとき、ライトがついていなかったり、ウィンドガラスが破れ、ボンネットがくぼんだまま進行しているように、事故を起こしたと誰もが認めるような状況で進行しているときです。
現行犯は警察官に限らず、市民でも逮捕することができます。市民の場合は、直ちに近くの警察官に引き渡すことが義務づけられています。
通常逮捕とは捜査官の請求により、裁判官の発行する逮捕状にもとづいて行なう逮捕です。逃走のおそれ、罪証隠滅のおそれがあるときに発行されます。在宅事件であっても、中途から罪証隠滅の危険などが出てきますと、令状がだされることがあります。
また、法理論上は疑問があるのですが、警察官の呼び出しに正当な理由もなく何回も出頭しないと、逮捕状がでることもあります。実務では五回以上不出頭の時に請求があると、裁判官から発行されているようです。ですから、横着をして、連絡もせず出頭しないと、手錠をかけて引っぱっていかれることにもなりかねません。
死亡事件、ひき逃げ事件など、一定の重大事件について、その犯罪を疑うに足りる十分な理由があり、しかも緊急を要して裁判官に逮捕状を請求するゆとりのない場合には、その理由を告げて、逮捕することができます。これを緊急逮捕と言っています。この場合は逮捕後、直ちに裁判官に令状を求めなければならないことになっております。裁判官から令状が出なければ、釈放することになります。
警察官は、現行犯の場合および緊急逮捕の場合は直ちに、通常の逮捕の場合は令状を示してから逮捕することになります。強制拘束ですから、交通事故であっても、手錠をかけることになります。
そうして、まず犯罪事実の要旨と弁護人選任の権利を告げ、事件についての弁解の機会を与え、弁解縁取書、逮捕手読書を作成します。
逮捕されても、留置の必要のないときは釈放となりますが、必要があるときは取調べを進め、逮捕の時から四八時間以内に検察官に送致する手続きをとらなければなりません。これを一般に身柄送検と呼んでいます。逮捕から四八時間のうちに、いちおうの捜査を終えることが要求されておりますので、この間の調べは相当に厳しいことを覚悟しなければなりません。
身柄送検を受けた検察官は、被疑者に弁解の機会を与え、留置の必要がなければ釈放することになります。さらに留置継続の必要があれば、送致を受けてから二四時間以内に(逮捕の時から七二時間以内)、裁判所に対し、勾留の請求をすることになります。
したがって、加害運転者である被疑者は、七二時間は逮捕され身柄を拘束されることになる
わけです。この間、家族との面会等は、捜査の必要上ほとんど許されておりません。
裁判所は、検察官から勾留の請求がありますと、まず被疑者の逮捕手続きについて違法の手続きがなかったか否かを調査し、被疑者に勾留請求のあったこと、犯罪事実を告げて、被疑者の弁解を聞き、弁護人選任権を告知します。その結果を勾留尋問調書に記載したうえ、手続きに違法があったり、勾留の理由や必要性がない場合には勾留請求を却下して釈放を命じ、請求を認容した場合には勾留状を発行します。
勾留状が発行されますと、被疑者は一〇日間拘束されることになります。その間、証拠が集まらなかったりしますと、さらに一〇日間、裁判所の決定で勾留を延長されることもあります。検察官はこの一〇日ないし二〇日間のうちに起訴、不起訴を決定し、起訴がないときは身柄を釈放しなければならないことになっております。起訴されますと勾留の期間は二か月となり、順次更新することもできますので、保釈などの決定のない限り、身柄は裁判確定まで拘束されてしまいます。
なお、最初の一〇日間の勾留中、ほぼ五日間が警察での取調べにあてられ、ここで証拠が整理され、検察庁に書類が送られますと、検察官が残りのほぼ五日間を捜査の期間にあて、起訴、不起訴を決定しております。身柄はこの間、警察署の留置折から拘置所に送られます。
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