逮捕勾留に対する防禦の仕方
逮捕勾留された被疑者には憲法上からもいくつかの権利が認められております。弁護人を選ぶ権利、黙否権、弁護人との面会権、勾留に対する不服の申立権、などの権利もあります。不利にならないための加害者の防禦は何でしょうか。
被疑者はいつでも弁護士を選任する権利があります。この段階では私選弁護人を選任する以外にありませんが、起訴されては遅すぎます。身柄を拘束されたら直ちに選任の手続きをとりましょう。被疑者が特定の弁護人の選任を希望し、その旨を申し出れば、拘束者はその手続きをとらなければならないことになります。また家族も、被疑者とは別に選任することができます。
弁護士は捜査の妨害にならない限り、秘密に自由に接見して、被疑者の相談に応じ、適切な指示を与え、その他の措置をとることができます。証拠隠滅にならない限り、自己の権利を守ることは当然の権利なのですから、身柄を拘束されたという異常な情況下において、精神的安定を図るためにも早目に弁護士に接見することが有益です。
在宅捜査の場合と追って、身柄を拘束されますと、一目も早く釈放され自由になりたいという欲求が強く働いてきますので、できる限り捜査官のごきげんをとり、これにあまえて、真実とは異なる供述をしやすくなってきます。ほんとうのことを言えば釈放してやるとか、ほんとうのことを言わないと何日も泊まっていてもらうという言葉に、ついついほんとうのことではない、捜査官の予断にみちた事実を認めてしまい、自分に不利益な供述調書に署名し、判を押してしまうこともあります。どんなに長く拘束されても、前に述べたように、起訴まで二〇日以上拘束されることはないのですし、最終処分権者は裁判所であり、調書が裁判では基礎的な証拠となるわけですから、目前の欲望にとらわれないよう気をつけましょう。
逃走のおそれがあるということが、逮捕勾留の一つの要件ですから、そのようなおそれはないという証拠を、あらかじめ検察官や裁判所にだしておきましょう。たとえば、戸籍謄本、住民票、会社の証明書、身柄引受書などです。逮捕時、住所、氏名などを黙否したり隠していた者でも、勾留請求の時に、住所、氏名も明らかとなり、住所、職業、家庭などがしっかりしている事実がわかれば、勾留の理由や必要性がなくなり、釈放されることもあります。
そこで、これらの資料をとりまとめて上申書を書き、検察官とか裁判所の令状係に提出しておきますと、身柄の処理にあたって考慮してもらえます。
逮捕勾留の手続きについて不服がある場合には、準抗告という不服申立ての手段があります。捜査官の処置に対する不服については裁判官が、勾留については合議体構成の裁判所が、不服申立ての当否について判断を下します。違法な行為や決定がなされたら、遠慮なく申し立てることです。仮に却下となっても、牽制する手段としては相当の効果を発揮します。
勾留状の発行の時には、勾留の要件があっても、後日、その要件が消滅することがあります。たとえば、住所も定まって「住所不定」でなくなったとか、証拠が揃って罪証隠滅の余地がなくなったような場合です。このような時には、勾留の取消しを申請しますと、勾留取消しとなって釈放されます。
交通事件ではあまり行なわれておりませんが、裁判所に勾留理由の開示を求めますと、裁判所は、公開の法廷で勾留の犯罪事実と理由を明らかにし、弁護人らの意見陳述を許します。これは、拘束されている者に問題点を明らかにし、時には捜査の進行状況を知ることができるという効果もあります。
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