不起訴処分に被害者が不服のとき
検察官の処分が常に公正適切なものであるとは必ずしも言えないところです。起訴すべきものを不起訴にしたり、その逆の場合もありうることです。このような場合の救済制度にはどのようなものがあるでしょうか。
起訴処分の当否については、当然に裁判所において争いとなりますから問題はありません。不起訴ということは、裁判所に処分を求めないということですから、加害者からの不服は考えられたいところです。結局、不起訴処分に対し、被害者、もしくはその遺族や親族らの不満が問題になります。
検察官の不起訴処分に不服のある被害者その他の利害関係人は、その処分をした検察官を指揮監督している上級官庁の長(高等検察庁検事
長、最高検察庁検事総長)に対し、地方検察庁の検察官の不起訴処分が不当であり、取消変更をなすべき旨の申立てができます。この制度は法律のうえではっきり言かれたものではありませんが、監督権の発動を求めるものとして実務上認められているものです。
この申立てがあったときは、その処分をした検察官は申立書に意見を付して記録および証拠品とともに高検や最高検に送付することとなります。これを受けた上級官庁の長は、その事件を再審査して不服申立てを理由があると認めれば、起訴すべき旨の指揮を発します。
検察審査会では、検察官の公訴権の実行、とくに不起訴処分の適否に関して、広く民衆の意志を反映させ、その適正を図ることを目的としています。この検察審査会は地方裁判所ごとに、一つ以上設置されており、選挙権を有する人々のなかから一一名一組で選ばれます。審査員となることは国民の義務の一つともなっているほどです。審査員は、事件には関係がないばかりか、裁判制度にもまったくの素人の集まりですが、外国の陪審裁判制度と類似の制度として、しだいに国民の間に定着し、実効性をあげてきています。
告訴告発者や被害者らは、検察官の不起訴処分に不服があるときは、処分をした検察官の所属する検察庁の所在地を担当とする検察審査会にその処分の当否について審査を申し立てることができます。この申立てを受けた審査会では非公開の審査会議を開いて記録を調査したり、申立人や処分をした検察官の意見を聞き、その申立てに理由があるかどうかを審査します。審査の結果、起訴相当または不起訴相当の議決をしたときは、理由を付した議決書を作成し、その謄本を、不起訴処分をした検察官を指揮監督する検事正に送ります。
これによって、被害者らは、不起訴処分に対して争えるわけです。しかし、現行制度では、検事正は検察審査会の議決には拘束されませんので、検事正が議決を参考にはしても、議決のとおりの行動をとるとは保証されておりません。
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