交通事故を起こすとどのような問題が生ずるか

いつ起こるかわからない交通事故は他人のことではなく自分自身の問題となってきています。事故現場での問題、被害者への対策、勤務先のこと、刑事処罰のことなど、事故の発生と同時に難問が続発します。
 自動車運転者にとって、交通事故の被害者となることはもとより加害者となることも身近な問題であって、いつ、自分の身にふりかかってくることかもしれない問題です。たとえば会社の帰りに、居酒屋で友人と一杯やって、自分で車を運転して帰宅の途中に、赤信号に気がつかずに停車中の車に追突してしまぅたとします。同乗した友人は血まみれとなり、フロントガラスは砕け散り、前車の運転者は大声でどなっている。運転者はこの結果にぼう然とし、酒の酔いも一瞬にしてさめ、頭のなかは走馬燈のように種々のことが浮かんでは消えていきます。このまま逃げてしまおうかという気持さえおこってくるでしょう。
 それでは事故をめぐっての問題点として、どんなものがあるか、説明しましょう。

スポンサーリンク

さて、運転者は、事故を起こしたら、もたもたしているわけにはまいりません。まずケガをした人たちを助けたり、病院に運ぶ手配をしなければなりません。交通の妨害にならないように車をかたづけたり、整理もしなければならないし、電話などで警察に事故の発生を報告して警察官が現場にかけつけてくるのを待機しなければなりません。
 そうして、警察官が現場に見えたら、事故状況の説明や現場検証の立会指示もしなければなりません。酒に酔っている疑いのある時は、検知管で飲酒量を調べられることもあります。さらに、ひき逃げや、酒酔い運転による事故のときには、そのまま逮捕されて警察署に留置されることもあります。こんなときに、運転者としては、どういう態度でこの問題に対処したらよいでしょうか。
 警察の調べも終わって、いちおう帰宅を許されたとします。まず病院に行って被害者や家族の方におわびにいかなければなりません。病院での治療の方法や治療費等の支払いについても相談しておかなければならないでしょう。やがて、示談のことや賠償金の支払いも協議しなければならないことになります。強制保険金請求の手続きや、任意保険会社への事故連絡、相談も早急に手をつけねばならなくなります。自動車の物損事故については、修理工場の選択、依頼、代車の手配、保険会社の査定などの仕事も生じてきます。
 酒に酔って事故を起こした運転者が、公務員や会社員である場合には、刑罰を受けるだけで はなく、休職、減俸、免職などの処分を受けることもあります。最近では懲戒について就業規則などに明確に定められている会社が多くなっています。
 また、免許証の取消処分や停止処分が、公安委員会によってなされます。
 警察での事件の調べが終わりますと、検察庁で再度調べを受け、裁判がはじまります。酒に酔つたうえでの事故の時には、罰金ですまされることはほとんどなく、懲役か禁錮刑になるのが大部分です。そこで、執行猶予の判決がない限り刑務所に服役しなければならないことになります。罰金の場合は検察庁に納付することになります。このようにして、わずかなミスともいえる事故でも、事故にともなう責任は決して軽くはなく、その責任も刑事、民事、行政の法律的責任や道義的責任を負わされ、時には刑務所に入れられて自由を奪われるばかりでなく、財産を差し押えられ、あるいは職業を失うということもあります。現代の交通事故は被害者を不幸にするのみでなく、加害者をも不幸に陥れてしまいます。私たちは、交通事故の加害者の立場を、他人のことではなく、身近な自身のこととして、真剣に考えなければならないと思います。

交通事故を起こすとどのような問題が生ずるか/ 交通事故と刑事、民事、行政上の責任/ 交通事故から処罰までのあらまし/ 交通事故現場でとるべき措置/ 被害者の救護義務とは/ 交通事故の報告義務を怠った場合/ 交通事故での替え玉の刑事責任/ 物損事故のときの措置/ 取り調べられるときの基本的な態度/ 取り調べられるときの運転者の権利/ 現場検証とそのやり方/ 供述と調書がくいちがった場合の対策/ 被害者にも過失がある場合の供述の仕方/ 交通事故の証拠保全の仕方/ 検察官の取調べのポイント/ 起訴、不起訴処分について/ 不起訴処分に被害者が不服のとき/ 身柄を拘束されるのはどのような場合か/ 逮捕勾留の手続きと対抗法/ 逮捕勾留に対する防禦の仕方/ 拘束されている人への面会や差入/ 保釈の手続きと保釈金額/ 刑事責任と示談との関係/ 示談はどのようにして進めるか/ 示談の履行の仕方/ 嘆願書、上申書と刑事処分の関係/ 略式命令による処罰/ 即決裁判手続きによる処罰/ 交通反則通告制度/ 裁判手続きはどのようにして進められるか/ 弁護人の選任の仕方/ 公判準備はどのようにしたらよいか/ 公判廷にのぞんでの態度/ 刑事処分の内容はどうなっているのか/ 量刑を左右する事情/ 少年の交通事故と家庭裁判所/ 罰金刑の執行はどうするか/ 懲役刑、禁錮刑の執行/ 故意犯と過失犯の違い/ 業務上過失犯とは/ 交通事故と信頼の原則/ 交通事故の三悪とは/ 被害者や第三者に過失がある場合/ 歩行者の飛出しで対向車に衝突した場合/ 自動車の故障による事故/ 交差点内の直進車の事故/ 交差点での右左折車の事故/ 車の死角と運転手の責任/ 無免許者に運転させた者の責任/

       copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved

スポンサーリンク