自動車保険約款の免責事項

自動車保険(任意保険)の免責については「自動車保険普通保険約款」に詳しく規定されています。
ここに「免責」というのは、被保険者が賠償責任を免れるということではなく、保険会社が被保険者に保険金の支払いをするのを免れる場合のことです。すなわち、自動車保険の被保険者が被害者に対して法律上の損害賠償責任を負った場合、普通ならば当然保険金を支払ってもらえるのに、一定の事由があったため、保険会社がその損害についててん補の責任をとらない、つまり、保険金を被保険者に支払わないことをいいます。
ところで、自動車保険普通保険約款によりますと、車両条項、賠償責任条項および一般条項の三部に分かれて規定されています。
任意保険である自動車保険の種類としては、通常、車両保険、賠償保険および傷害保険の三種がありますが、前記普通保険約款は、このうち前二者について規定したものです。
すなわち、「車両保険」は、偶然な事故によって「保険の目的」である保険証券記載の自動車およびその付属品について生じた損害をてん袖するものですが、その損害てん袖は車両条項および一般条項の規定に従って処理されています。また、「賠償保険」とは、保険証券記載の自動車の所有、使用または管理に起因して、他人の生命または身体を害したり、他人の財産を滅失、毀損または汚損した場合に、被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって蒙った損害を保険会社がてん袖するもので、この場合に準拠とされているのが賠償責任条項および一般条項です。
自動車保険普通保険約款は、一般人にとってなかなか難しく、また、法律上の疑義も少なくありません。しかし、約款、特にその中の免責規定は、被保険者にとっては、保険料を支払っていながら、万一というときに保険金を支払ってもらえなくなるという大切な決まりですから、これをなおざりにすることはできません。

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車両事故において、保険会社がてん補責任を免ぜられる場合として、約款上規定されている内容は、つぎのとおりです。
事故の原因について免責となる場合、一定の抽象的危険(異常危険ないし危険増大)発生について免責となる場合、損害の形態または範囲について免責とされる場合。
対人事故において保険者(保険会社)がてん補責任を命じられる場合として、約款上規定されているのは次のとおりです。
損害賠償額責任が発生した原因について免責となる場合、一定の抽象的危険(異常危険ないし危険増大)発生について免責となる場合、損害賠償責任態様につき免責となる場合。
自動車保険普通保険約款に「免責」として規定されている事項は、以上述べた点に尽きますが、その他自動車保険の目的、性格等から損害のてん補を受けられない場合があります。たとえば、人身事故において、その自動車が自賠法のいわゆる責任保険の契約を締結しなければならない自動車である場合には、その損害の額が同法に基づいて支払われる金額を超過する場合にかぎって、その超過額しかてん補してくれません。つまり、強制保険金で損害の全部をまかなわれることができる場合には、自動車保険の保険金はもらえないことになります。また、自動車保倹を契約し、すでに保険期間が始まった後でも、保険料領収前に生じた損害については、保険会社はてん袖してくれないことになっています。その他事故が発生した場合における保険会社に対する連絡義務や履行義務があり、これらに正当の理由がなくして違反したときには、損害をてん補してくれなかったり、金額の一部を控除されたりしますから、十分注意する必要があります。
ところで、保険会社は保険契約者または被保険者において保険会社に対する通知義務の生ずる所定の事実が発生したとき、またはその旨保険証券に承認の裏書きを請求してきたとき。
保険契約者、被保険者またはこれらの者の代理人もしくは自動車の運行を管理する者が、自動車を常に安全に運転しうる状態に整備し、かつ、官庁の検査を受けることについて、正当な理由なくして、これを怠ったとき。
保険会社が自動車に関し必要な調査をし、かつ、保険契約者または被保険 者に対し必要な説明もしくは証明を求めることができることについて、正当な理由なくして、保険会社のその要求に応じないときは、それぞれ保険契約を解除することができます。しかし、この解除は、将来に向ってのみその効力を生ずるものですから、解除を事由として、すでに損害が発生している場合には、保険会社はその損害をてん袖する責を免れることはできません。これは、自賠法二〇条の二にいう「解除」と同旨で、解除の効力が発生するまでは、保険契約は有効に存続するのですから、その間に発生した損害は、免責その他の事由のないかぎり、保険会社に損害をてん補する責任が生じます。

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