判決に不服のあるとき

第一審の判決に不服のある被告人、検察官およびその他法律に定めのある者(被告人の法定代理人、保佐人、原審における代理人または弁護人など。ただし、これらの者の上訴は、被告人の明示した意思に反して、これをすることはできません)は、控訴を申し立てることができます。もちろん、裁判の一部に対しても控訴できます。
控訴しようとする場合には、控訴の申立期間、すなわち判決言渡の日の次の日から数えて一四日以内にしなければなりません。控訴権が消滅した後でなされた抗告は、第一審裁判所から棄却されてしまいます。
控訴の申立ては、書面で、その宛名は、原審が地方裁判所であれ簡易裁判所であれ高等裁判所でありますが、書面そのものは原裁判所に差し出します。

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控訴をしますと、裁判所から控訴申立人に対し、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を差し出すよう通知がありますから、これを控訴裁判所に提出しなければなりません。
控訴理由には、控訴手続の法令違反、法令の適用の誤り、刑の量定不当、事実誤認、その他がありますが、交通事故事件の場合は、ほとんどが事実誤認および量刑不当といえましょう。
控訴審は、いわゆる事後審で、事実の取調べはあまりなされませんし、いわゆる弁論も通常行なわれませんから、控訴趣意書の内容が非常に大事となってきます。控訴趣意書の提出期日は、その通知が送達されてから少なくとも三週間ありますから、その間十分第一審の判決を検討して、その趣旨を明快にする必要があります。
控訴については、いわゆる不利益変更の禁止という原則があります。つまり被告人側のみが控訴した事件については、原判決の刑より重い刑を言い渡すことができないことになっています。これに対し、検察側が控訴した場合または検察側、被告人双方が控訴した場合には、第一審の判決より重い刑が宣告されることがあります。したがって、被告人が控訴するか否かは、検察側が控訴するかどうかにかかることも少なくおりません。また、検察側も、被告側が控訴したときにかぎり控訴するという作戦もあります。
交通事故事件には少ないようですが、検察庁側が執行猶予の付された判決に不満のある場合に、被告人側がそのまま確定させればともかく、もし控訴すれば検察官側も控訴するという考えをもっているときもあります。したがって、検察官側が先に控訴したような場合は別として、そうでなければ控訴しない方がむしろ有利ということもあります。いずれにしても、このあたりの状況判断は、なかなか難しいものですから、信頼できる弁護士とよく相談されて、万全の策をとられるようおすすめします。
つぎに、控訴審判決に対しても不服のあるときは、上告することになります。上告審も控訴審と同様事後審ですが、より法律審としての傾向が強く、上告理由は憲法違反または判例違反にかぎられます。憲法違反とは、憲法の規定に違反すること、たとえば、自白を唯一の証拠として犯罪事実を認定した場合、または、憲法の解釈に誤 りがあることです。また、判例違反は、最高裁判所の判例と相反する判断をすること、もし最高裁判所の判例がない場合には、大審院もしくは高等裁判所の判例と相反する判断をすることをいいます。
しかし、審査は、法律問題にかぎられず、事実点にも及びます。控訴と上告との間には構造上の相違が認められないので、控訴審に関する規定は、上告審についても準用されます。
上告申立人は、裁判所の指定した日までに、上告趣意書を上告裁判所に提出しなければなりません。上告審では、公判期日に被告人の在廷は必要ありませんし、身柄事件の場合被告人の移監も必要ではありません。上告審は法律審で、難しい問題を含んでいますから、その申立てをする前によく弁護人と協議しなければなりません。

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