交通事故を起こして逮捕された場合の措置

交通事故の場合でも、被疑者の身柄を拘束して行なう、いわゆる強制捜査によって捜査される場合があります。逮捕および勾留は、その身柄の拘束方法として認められ ています。
逮捕には、逮捕状という令状による「通常逮捕」と逮捕状によらない「緊急逮捕」と「現行犯人逮捕」とがありますが、それぞれ一定の要件が必要とされています。しかし、これらいずれの場合も、強制捜査なのですから、その逮捕を拒むことはできません。もちろん、逮捕される事由がなければ、それを主張したり、任意捜査で捜査してくれと事実上頼むことはさしつかえありませんが、捜査官があくまで強制捜査をするというならば、法律上はやむを得ないことと観念しなければなりません。逮捕を免れようとして捜査官に抵抗したりしますと、公務執行妨害罪などの責任を問われるおそれがありますから注意が肝心です。

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では、逮捕された場合、どうしたらよいかということですが、絶対的な対策というものはありません。ただ、実際上には、つぎのような方法をとることが考えられます。
逮捕され、警察署に巡行されると、まず警察官から、犯罪事実の要旨と弁護人を選任できる旨を告げられたうえ、弁解の機会を与えられます。そして、この際「弁解録取書」という書面が作成されます。そこで、この機会をつかんで、事情を係官によく説明し、身元をはっきりさせて、捜査官に強制捜査までする必要性がないことを明らかにします。弁解録取書は、後に勾留の理由、その必要性の有無、その後の捜査の指針になり、きわめて重要なものとな りますから、慎重に答えた方がよいでしよう。実務上は否認すると勾留の可能性が多くなるようですが、真実でないこと弁をしますと、後日これを否定するのに困難となることが少なくありませんから注意する必要があります。
取調べの結果、留置の必要がないと認められれば直ちに釈放されますが、警察官がその必要を認めますと、逮捕時から四八時間以内に身柄を証拠書類などとともに検察官のもとに送られます。いわゆる「身柄送検」ですが、これを受けとった検察官は、再び被疑者に弁解の機会を与え留置の必要がなければ釈放し、二四時間以内に裁判所に対して勾留の請求をするか、公訴を提起するかしなければなりません。また、勾留を請求された裁判官は、直ちに勾留の理由の有無を取り調べ、理由がなければ被疑者の釈放を命じ、理由があれば勾留することになります。
つまり、被疑者は、警察官が釈放しな い場合でも、検察官および裁判官に対して弁解する機会があるわけですから、この機会に勾留の必要性のないこと、すなわち、定まった住居を有していること、罪証を隠滅するおそれがないこと、逃亡しまたは逃亡するおそれがないことなどを強調し、よくわかってもらえるようにします。
逮捕された場合、特に勾留までされた場合には、直ちに知り合いの弁護士を弁護人に選任することが有利です。ただ、この場合、弁護人を選任できるといっても、それは自己の費用で弁護人を依頼できるという趣旨ですから、まだ被疑者の段階(起訴される前)では、国家の費用で弁護人(国選弁護人)を付けてもらう権利までは与えられていません。つまり、私選弁護人をつけることができるという意味です。
弁護人を選任する場合は、その弁護士名をいえば、警察でも検察庁でも裁判所でもすぐ連絡をしてくれます。弁護士に知り合いがないときは、弁護士会に紹介してもらえるようにすればよいのです。弁護人(または弁護人になろうとする者)とは、立会人がいないところで面会したり、書類や物の授受をすることが法律上許されています。したがって、そのとき、よく弁護人に事情を説明して、できるかぎり早く釈放してもらえるようにします。もっとも、この面会は、捜査官からある程度、日時、場所、時間を制限されることかあります。
弁護人以外の者とは、逮捕中で勾留前の被疑者は面会する権利を法律上認められていないので、家族などと面会したいときは捜査官に事実上頼むほか方法がありません。勾留後は、法令の範囲内で面会したり、書類や物の授受をすることができますが、裁判所が被疑者が逃亡または罪証を隠滅するおそれがあるという理由で、面会や物の授受を禁じたときは、面会をしたり物の差入れをすることはできません。このように、家族などとも面会する機会がありますから、捜査官に申し出て、弁護人の選任などを頼むのもよいでしょう。
逮捕状の見付されたことについて不服申立てをする方法は、遺憾ながら現行法上はありません。事実上、逮捕の不当を捜査官や裁判官に申し立てることはできますが、法的に定められた方法はありません。
裁判官の勾留に対して不服があるときは、その被疑者または被告人、その弁護人らは、準抗告を申し立てることができます。ただし、犯罪の嫌疑がないことを理由とすることはできません。この準抗告は、管轄裁判所に認容されれば、勾留の裁判は取り消され、その被疑者または被告人は釈放されます。この準抗告は、裁判のあった日から三日以内にしなければなりません。

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