ひき逃げその他の場合の自賠責保険金請求
自賠法は、政府の自動車損害賠償保障事業として、自動車にひき逃げされ犯人が判明しなかったとき、本来責任保険に加入しなければならない義務があるのに加入していない自動車、自動車が盗難または無断で運転(泥棒運転が適例)され、本来の保有者に責任の発生しないとき、道路以外の場所(たとえば,工場構内など)のみで運転されている自動車、などによって死傷した場合には、強制保険金(自賠責保険金)と同額の保障金が被害者に支払われるようになっています。したがって、政府の保障事業へ請求をすることができます。
なお、責任保険の請求の場合は、加害自動車が契約されている保険会社なり責任共済の窓口で行なうのですが、保障事業へ
の請求は、どこの保険会社またはどこの責任共済の窓ロに請求を行なっても受け付けてもらえます。
政府の保障事業は、被害者が他の救済手段によって救済されるときは、その救済される限度において損害のてん補を行なわないとしています。
たとえば、被害者が労災保険や健康保険または国民健康保険等の給付を受けられる場合には、まず、それら社会保険の給付を受けるようになっています。
しかし、責任保険にはこのような規定はありません。このことは、保障事業に対する請求権は損害賠償請求権が前提要件とはなっていますが、あくまでも保障請求権であるからです。
政府保障を請求する手続としては、申請書に医師の診断書または検案書、警察の事故証明書にれにひき逃げとか泥棒運転による事故であることを証明してもらいます。死亡した者については、請求者と被
害者の続柄を証明する書面(戸籍謄本・住民票謄本など)その他支出明細書や領収書等を添付して保険会社または責任共済の組合に提出します。申請書には、請求する者の氏名および住所、死亡した者についての請求にあっては、請求する者の死亡した者との続柄、被害者の氏名および住所ならびに加害行為の行なわれた日時および場所、無保険車による事故の場合は、その加害者の氏名および住所、政府に対し損害のてん補を請求することができる理由(ひき逃げ、無保険車、盗難車の別)、加害自動車の登録番号または車両番号(これが存しない場合は車台番号)が明らかである場合はその番号、他の社会保険(健康保険・労災保険等)からの給付を受けた場合または受け得られるべき場合は、その給付の根拠およびその金額、請求する金額およびその算出基礎。
以上が主な請求のための必要書類でありますが、これらのほとんどの用紙は保険会社の窓口に備え付けてあります。
保険会社なり責任共済が保障事業の受付事務を行なっているのは、政府との委託契約にもとづいて行なっているわけです。
この委託契約(自動車損害賠償保障事業業務委託契約準則)には「保障事業の業務のうち損書のてん頻額の決定以外のものを保険会社に委託する」となっており、この結果、保険会社は受け付けた書類から予備査定を行なうと全書類を政府に送付して、政府が最終的にてん補額の決定を行なうことになっています。
保障事業は、本来の賠償責任者にかわって政府が被害者救済という面から実際の責任者に代わって被害者に立替払いをする趣旨ですから、保障金を支払った後はその金額を実際の責任者から回収するように政府にその代位請求権が認められています。このように、政府が損害をてん補しますと、賠償請求権が政府に移りますから、被害者は、以後加害者に損害賠償請求をし二重取りすることはできません。もっとも、保障以上の損害があった場合に、その不足分を更に加害者に請求することはもちろんできます。
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