保険の分類と種類
保険はその観点、内容、標準などから、いろいろに分類することができます。その主要な分類はつぎのとおりです。
公保険と私保険
保険が公共政策の実現手段としての性質の有無からの分類です。すなわち、公保険とは国や公共団体が共同経済的見地から行なう公的な政策の実現手段として運用される保険のことをいい、私保険とは関係者の純然たる私経済的見地から運営される保険をいいます。
公保険は、さらに社会政策の実現手段としての社会保険と産業政策の実現手段としての産業保険とに分けられます。
前者の例として健康保険、国民健康保険、日雇労働者健康保険、労働者災害補償保険、厚生年金保険、失業保険、船員保険、等があり、後者の例として農業保険、森林火災保険、漁船保険、中小企業信用保険および輸出保険、等があります。
営利保険と相互保険
保険経営が収益を目的とするかどうかによって区分した種類です。
営利保険とは保険の引受けを営業とする者が保険者となって行なう保険で保険料などの利益総額と支出した保険金総額との差額を利得します。日本では現在、損害保険事業は、ほとんどすべて営利保険として営まれ、いわゆる損保会社がこれを担当しています。
これに対し相互保険とは、保険加入者を構成員とし、相互の保険を行なうことを目的として結成された特殊な法律上の団体を保険者として、その構成員のために行なわれる保険のことをいいます。
この両保険の相違は営利保険が保険営業者と個々の加入希望者との有償的債権契約によるものであるのに対し、相互保険の場合は保険加入者は同時に保険者である保険団体の構成員(社員)ということになります。
したがって、こそ事業運営の方法は異なりますが、実際は後者の場合も社員の責任を約定の保険料に限定するなど企業的採算が合うよう運営していますので、現在では両者の差異はほとんど消滅し、両者の保険技術、経営実態は何ら変るところがないといわれています。
人保険と物保険
保険事故発生の客体が人であるか財物であるかによって区別する方法です。
人保険とは保険事故発生の客体が人である場合の保険で、その事故の種類によって死亡保険、生存保険、生死混合保険(いわゆる「養老保険」で被保険者が保険期間中に死亡したとき、または満期まで生存したときに所定の保険金額が支払われる保険)疾病保険、傷害保険、廃疾保険、母性保険および失業保険などに分かれます。
この人保険は保険事故によって発生する経済的必要額(損害額)を客観的に確定することは困難ですから、いわゆる確定保険を原則としています。
物保険とは財産保険(または財保険)ともいい、保険事故発生の客体が財物である場合の保険のことをいいます(中には具体的特定物を対象とするものを物保険,加入者の全財産を対象とするものを財産保険と区分けする学者もいます)この物保険ないし財産保険としては、火災保険、運送保険、海上保険、盗難保険、汽船保険、硝子保険、自動車保険、信用保険、保証保険などがあげられます。
定額保険と損害保険
保険事故が発生したときに支払われる保険金の金額の定め方からする分類です。定額保険とは保険事故が発生した場合、実損害の発生の有無またはその損害額に関係なく、当初に定められた金額を保険金として支払う保険で、損害保険とは、保険金を当初きめないで、保険事故発生によって生じた実損額によって定まる保険をいいます。
したがって後者を不定額保険ともよびます。
前述の人保険は多くの場合定額保険で、生命保険は、その典型的なものです。もっとも人保険のなかでも傷害保険などでは、不定額保険の場合もあります、これに対して、物保険ないし財産保険は、原則として損害保険です。
元受保険と再保険
保険金の支払責任発生の原因(保険事故の内容)にもとづく区別です。
元受保険とは、保険関係にもとづく保険金支払責任の負担という出来事を除いた偶発事故を保険事故とする保険のことで、原保険ともいいます。これに対し再保険は、ある保険者が引き受けた保険契約上の責任の一部または全部について、さらに他の保険者に保険をつける場合の保険をいいます。再保険は元受保険が生命保険であると損害保険であるとを問わず、損害保険の一種である責任保険です。
再保険は、高額保険の危険分散などによる保険団体の安定を図ったもので、なかには再保険にさらに再保険する再々保険というものもあります。
以上の分類のほか、海上保険と陸上保険、企業保険と家計保険などの分類もできます。
また、商法が分類するように損害保険と生命保険との分類もありますが、前者は、保険金の金額の決定方法を標準とする概念で、後者は保険事故の対象ないし種類を標準とする概念ですから、この分類は理論的には正しい分類の方法とはいえないでしょう。
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