自賠責保険金を請求する手続き
自賠責保険の場合の請求の受付から支払いまでの経過は、請求を受け付けた保険会社は、損害の調査のため査定事務所にその提出書類全部を送付し、査定事務所で「自動車損害賠償責任保険損害査定要綱」に基づいて損害を調査し、完了したときに書類の返送を受け、保険会社から請求者に損害賠償金額が支払われることになっています。
なお、自賠責保険金請求の受付は、加害者が契約している保険会社が行なうことになっています。
被保険者(保有者、運転者)は被害者に対し損害賠
償金を支払ったときは、その支払った限度において、保険会社に対し「保険金」の支払いを請求することができます。また、被害者は加害者から損害賠償をしてもらえ
ない場合(すなわち,加害者との聞に示談が成立し、かつ加害者が示談条件を履行した場合を除きます)には、政令で定める手続きにより、直接保険会社に対し、保険金額の限度において「損害賠償額」(この直接請求の場合には保険金と呼ばずに損害賠償額といいます)の支払いを請求することができます。
保険金(または損害賠償額)の支払いを請求するには、請求者は、加害者が契約している保険会社へ必要な書類を提出しなければなりません。
保険金(または損害賠償額)の本請求に必要な提出書類、およびこれに関する注意点は下記のとおりです。
(1)保険金(損害賠償額)支払請求書
保険金支払請求書は、保有者または運転者が請求する際使用します。損害賠償額支払請求書は、被害者(死亡の場合は遺族請求権者)が請求する際使用します。
(2)警察署発行の事故証明書
自動車事故が発生した事実についての公的な証明として、警察の事故証明書の提出を必要とします。交通事故が発生した場合には、通常警察官がその事故現場に立ち会い、実地検証を行ないますが、実地検証を行なった事故について事故の関係者から証明方の申請があれば、警察署は署長名をもって事故の事実を確認する旨の証明書を発行し交付しますやむをえない事情のため、警察署発行の事故証明が入手できない場合(たとえば、バスの車内事故、工場構内における事故、僻地の事故等)には、警察の事故証明入手不能の理由書、事故を証明する証人数名の現認書、加害自動車の保有者および運転者の事故に対する自認書
を取り揃えたうえ、保険会社に出向いて一応相談してみてください。
(3) 事故発生状況報告書
事故発生の状況を略図入りで記述するものであり、事故状況さえわかれば説明も図面も簡単でよいとされております。
(4) 診断書
事故による傷害の状態を証明するため、医師の診断書が必要です。診断書は損害調査の基礎資料として重要な役割を果たすものですから、傷害の態様のみならず、入院日数・治療期間 ・全治見込 ・治癒日時等の記入された診断書を医師からもらって提出します。付添看護を必要とした場合にはその旨を所要日数とも併せて記入してもらいます。後遺障害を残すような場合にはその内容をなるべく詳細に記入してもらいます。医師の治療をうけず柔道整復師の施術のみをうけたときは、その施術(治療)証明書(傷病名の記載あるもの)をもって医師の診断書にかえることができます。
(5) 死亡診断書または死体検案書
死亡の場合にのみ提出を要します。
(6) 戸籍謄本(または除籍謄本)
事故により死亡した者と遺族請求権者との関係を確認するために必要としますから、一戸籍内全員が記載された戸籍謄本を提出します。
現在時点の同一戸籍在籍者のみならず、結婚、分籍による離籍者の中に請求権者が
いればその記載をも必要とします(旧戸籍法の時の離籍者については除籍謄本を取り付けることを必要とする場合もあります)。
(7) 住民票または戸籍抄本
被害者が未成年者の場合の請求には法定代理人(親権者または後見人)が請求者となります。また、未成年者の被害者自身が直接請求する場合には法定代理人の同意を必要としますから、被害者と法定代理人との関係を証明するため住民票または戸籍抄本が必要です。
(8)委任状
被害者または加害者が都合で代理人を立て、保険請求を行なう場合には委任状を必要とします。また、死亡事故で、請求する被害者側に複数の遺族請求権者がいる場合には、事務手続上代表者1名に請求させることを原則としますから、代表者に対する他の全員の委任状を必要とします。
(9) 印鑑証明
委任を行なった場合は、委任者・受任者双方の印鑑証明を委任状に添付することを要します。また、委任によらず直接本人が請求する場合でも、保険会社は支払いの際本人であることの確認のために印鑑証明の提出を求めることがありますから、あらかじめ用意をしておくことが望ましいと思われます。
(10) 治療費関係の書類
診療養明細書、看護料の明細書や領収証、雑費・交通費等の領収書または明細書等、治療は一般慣行料金でもよく、また健保・国保等による治療でも差支えありません。柔道整復師の施術も医療と同様に取り扱われます。
(11) 休業損害関係の書類
治療期間中欠勤したため勤務先の給与が減額または不払いとなったり、営業を休んだために当然得らるべき収入が得られなくなった場合にはその事実を立証する書類が必要です。たとえば、事業主の休業損害証明書・税務署の所得証明・民生委員等の職業証明などです。
(12) 示談書または示談金領収証
示読書自体は自賠責保険への請求には必ずしも添付を必要としませんが、示談が成立しているときは示談書の提出が望ましいとされています。特に、加害者請求の場合において、加害者がすでに示談金を支払っている場合には、示談書と示談金領収証の提出を必要とします。
また、加害者がまだ示談金(賠償金)を支払っていない場合には、その支払いをなし、示談書と示談金領収証を添付しないかぎり自賠責保険金の支払いはうけられません。
というのは、加害者が被害者に賠償する前に保険金を受け取りながら被害者に保険金(賠償金)を支払わないというような事態の発生を防ぎ、被害者保護の徹底を期するためなのです。
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