保険の取扱い機関
保険の取扱い機関、すなわち、保険経営の主体となれる保険者は、公営保険にあっては、国、地方公共団体、公法上の特別の法人または公益法人であり、私営保険にあっては、保険会社に限られています。
保険会社とは、会社組織をとる保険者のことをいい、保険株式会社と相互会社を総称する言葉として用いられています。したがって、私保険の実際においては、保険者と保険会社とが同義に取り扱われ、保険業法などでも、その規制の対象を保険者とせず保険会社と明示して規定しています。
保険会社に対しては、原則として、他の事業の兼業を禁止するほか、生命保険と損害保険との兼業をも禁止されています。そこで、保険会社は損害保険会社と生命保険会社との二つに分かれています。
保険代理店とは、一般に、損害保険会社の委託を受けて、その保険会社のために損害保険契約締結の代理をする者でその保険会社の役員または使用人でないものをいっています。したがって、代理店は、保険会社の使用人ではなく、保険会社のため保険契約の代理をする者です。
保険会社は、代理店契約にあたって、その証として、通常、代理店と代理店委託契約書を取り交しています。その契約書によりますと、通常の場合その契約の効力は、保険募集の取締に関する法律によって代理店登録がなされたときに始まり、契約期間は無期限ですが、登録取消の処分を受けたときは、そのときから、契約の効力を失います。この代理店契約は、保険の種類ごとに行なわれるようになっており、報酬として、代理店手数料が支払われます。
代理店は、保険募集の取締に関する法律、自動車損害賠償保障法、損害保険料率算定会が制定した料率や条件、会社の諸規則、保険約款、特約条項を厳守し、すべて会社の指図に従うことが約定され、その契約または会社の指図に違背したため会社に損害を与えたような場合には、その損害を賠償する責任を負わされます。代理店が所定手続を行なわなかったため、契約者に迷惑をかけたり、保険会社の円滑迅速な処理を妨げたりすることも往々にしてありますが、十分留意すべきでしょう。
なお、代理店契約の条文で、代理店の過失について保険会社が責任を負わない旨の定めがなされていても、このような免責規定は、保険会社と代理店との間でしか効力はありませんから、これによって保険契約者に対抗することはできません。
保険会社は、すべて保険業法にもとづいて財務大臣の営業免許を受け、その経営について常時監督を受けています。いうまでもなく、これによって保険会社の支払能力を確保して、保険契約者、被保険者の利益を保護しようとするものです。したがって、保険会社として免許を受けて営業をしている以上、一応はどこの保険会社でも信頼できるといえるでしょう。
また、保険金額に対する保険料率は、同じ保険種目で同一条件なら、どこの保険会社でも同じです。したがって、その点に関する限り、どこの保険会社を選んで契約しても変りはないということになります。
しかし、保険会社が免許をえて経営しているからといって、国が個々の保険契約や保険金の支払いの内容まで保証してくれているわけではありません。事実、会社によって資本、資力、営業状況などがちがい、その信頼度も異なってきますし、社員の熱意やサービスもまちまちですから、実際上いろいろな意味でかなりの開きがあるように見受けられます。保険会社によっては、保険給付が悪いとか遅いとかいう話もよく開くところです。
保険会社の内状を知ることは一般の人には困難でしょう。保険関係の専門家や実務家などの正当公平な意見をきくのが一番手っとり早い方法ですが、直接保険会社を訪ねてみて、社員と面談したり、決算書類やその付属書類を閲覧するのも一方法です。会社全体が活気に溢れ、職員や代理店に対する教育が徹底し、保険契約の締結や保険金の支払いなどが迅速、確実で、サービスの行き届いている会社は、まず信頼できるといえましょう。熱心な方は、財務省監修の保険年鑑などの政府刊行物や保険専門の新聞、雑誌などをみて、資本金、諸積立金、責任準備金積立率(責任準備金の収入保険料に対する割合)、経費率(支出事業費の収入保険料に対する割合)などを調査するのもよいでしょう。その会社の担保力や信用度についてもそのことは知ることができると思います。
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