強制保険金請求の手続き
強制保険金の請求の手続は、一般にめんどうなものと考えられていますが、示談屋など不正に保険金をとろうとする人たちも少なくない現状ですので、多少のめんどう
は辛抱しなければなりません。
強制保険の保険金は、加害者、被害者のいずれでも請求することができます。
強制保険金請求の手続は、以下に掲げる書類をそろえ、必要な事項を記入して、契約している保険会社に提出すればよいのですが、もっとも簡使な方法は、まず契約保険会社に行き、準備されている書類の様式書か二部ずつもらい、それについて説明してもらうことです。
保険金請求に必要な書類およびその作成または入手の要領は、つぎのとおりです。
自動車損害賠償責任保険金支払請求書。この請求書の書式は、どの損害保険会社ともほとんど共通のもので、各個に必要な事項を記入します。「証明書番号」「保険契約者氏名」「保険期間」「自動車の種別並びに番号」などは、「自動車損害賠償貴任保険証明書」に記載されていますから、間違わないように記載します。
また、事故の原因、場所、状況は、警察からもらった事故証明書を見て、簡明に記入します。たとえば「前方不注意のため、何町何丁目何番地先交差点で横断歩道を横断中の被害者をはね即死させた」など要領よく書きます。
自動車事故報告書。この報告書は「事故発生状況報告書」ともいい、必要に応じ、提出を求められます。場合により、現場目撃証人が書きます。その内容は、支払請求書に記載した証明書番号、自動車登録番号、運転者の住所・氏名・電話番号、被害者の住所・氏名・電話番号、事故発生の日時・場所、取扱警察署または現記者の住所・氏名、事故発生の原因・状況、状況略図、被害者の意見、報告者の住所・氏名などです。
事故証明書。これは、事故を取り扱った警察署が事実を証明するものです。様式は特に定まっておりませんが、普通、保険会社に用意されている様式書を使っているようです。警察署によっては別個に様式を作り、それを発行しているところもあります。いずれにしても、証明願を書き、交通係の窓口に出せば、警察署で誤りのないかぎり署長印を押してくれます。
診断書・死亡診断書。これは被害者のかかった医師が書くものです。これは、損害賠償額を判定する基礎になるものですから、書式にしたがい、正確かつ詳細に記載してもらう必要があります。
被害者が医師の治療を受けず、柔道整復師の施術のみを受けた場合には、柔道整復師の「施術証明書」でもかまいませんが、脱臼または骨折の患部の施術以外の治療については、医師の診断書が必要です。
印鑑証明書。この印鑑証明書は、市町村役場で発行してくれます。未登録の人は、印鑑を持参して登録をすませば、その証明書をすぐ出してくれます。
また、他人に「委任状」を添えて交渉を委任する場合には、その委任状にも本人の印鑑証明書が必要であり、代理人の印鑑証明書も必要です。
除籍謄本。死亡事件のとき、被害者が死亡したことを証明する除籍謄本が必要です。これは、本籍地の市町村役場の戸籍係で発行しています。
示談書。当事借間で和解したことを証明する書類です。当事者双方の署名捺印が必要です。示談金の受渡しが済んでいれば、「示談金領収書」を添付します。
治療費その他関係明細書・領収書。被害者の治療費など、たとえば、応急手当費、初診料、入院費、投薬費、手術費、処置料、看護料や入院中の諸雑費および通院交通費などの明細書および領収書を添付する必要があります。
また、応急護送費や死亡の場合の葬儀費などの明細書および領収書も提出する必要があります。
したがって、これらの請出費は、事故直後から、支払いをしたつど必ず記帳しておき、また、領収書を受領するようにしておきましょう。
委任状。保険金の請求または受領を他人に代行してもらうときは、代理人を立てることができますが、この場合、その権限のあることを証明する委任状を添付する必要があります。
以上の書類は、査定事務所が書類審査をするために必要な立証書類です。したがって、これらの書類が不備であったり記載内容が間違っていたりしますと、再度の提出を求められたり、出頭を求められたりして、二重三重の手数がかかりますから、保険会社の窓口で十分教えてもらった方がよろしいでしょう。これを面倒がって、いわゆる示談屋に領みますと、手数料をとられることはもちろん、保険金まで横領されたりすることもありますから、代理人を頼むなら、信頼のおける人に委任するよう注意することが肝要です。
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