裁判を有利に運ぶための訴訟の準備

私は交通事故の加害者ですが、被害者側が自分の過失を全然認めないで高圧的に多額の賠償を請求するので示談しないでいたところ、相手方は訴訟を起こしてきたので受けて立つつもりです。裁判を有利に運ぶにはどのような準備をしておけばよいでしょうか。
この場合には、被告側としては、これに応訴し、自らあるいは訴訟代理人が出廷して口頭弁論をしなければなりません。つまり、その期日に出廷して、当事者としての申立、攻撃防禦方法の提出、相手方の主張に対する法律上または事実上の陳述、その他いっさいの訴訟行為をする必要があります。もし、期日に出廷せず、何らの主張もしない場合には、いわゆる欠席裁判により、原告の主張が原則的に認められ、被告の敗訴となります。
被告側としては、通常、まず「答弁書」を作成して、相手の主張の認否や抗弁を明らかにします。複雑な事件のときは、準備手続を開始することもありますが、これをしない場合でも、事件の争点の把握や証拠の整理などのため「準備書面」を提出するのが普通です。なお、時には、反訴を試み る必要があるときもありましょう。

スポンサーリンク

では、裁判上実際にどのような点が争われるかといいますと、何といっても損害の内容および損害額と、過失の有無、状況および過失相殺の二点にあるようです。大阪地裁のある裁判官は、「(大阪地裁)交通部発足以来、交通事件の争点を整理してみると、特点の ちがいにより多少の差はあるが、おおむね次のような割合になっている。損害を争うもの 一〇〇%、過失を争うもの 九〇%、過失相殺を主張するもの 五〇%、責任原因(運行者、使用者などの地位)を争うもの 二五%、事故自体(接触自体、因果関係)を争うもの 五%)」と述べられています。
では、被告側として、どのような準備をしておけばよいかを考えてみましょう。
何といっても、原告の主張は、その訴状に盛られていますから、その内容をめん密に検討します。この場合、事実関係はともかくとして、法律問題は専門家の意見をきかなければ万全とはいえませんから、信頼できる弁護士によく相談されることが必要です。
つぎに、事故発生の原因を徹底的に検討することが必要です。一般に、事故発生の真因を探究することは非常にむずかしいもので、運転経験が豊富であり、交通法規や関係判例に精通している人でないとなかなか本当のところはわかりません。警察の作成した調書や実況見分書でも、運転者の責任追及に急なあまり、あるいは科学的知識に乏しいため、真因をつかめていないことが少なくおりません。熱心な人で、毎日のように現場に出かけていき、ついに真因を発見した人もおります。
事故の真因がわかれば、過失の有無、程度がおのずから明らかになります。これが賠償責任の有無や過失相殺の決定的な要素となるわけですから、きわめて重大です。
交通事故事件の証人、証拠物については、捜査当時のものが利用されることが少なくありませんが、捜査官はえてして被告に不利益となる証拠の収集に熱心で、どうしても一方的に片寄りがちですから、被告側は、被告としての有利な証拠の収集に努力しなければなりません。
原告のなかには、裁判所の認定額が減少されるのを見込んで、大目に請求額を定めたり、算定の方法が適当でなかったり、計算間違いをしている場合もあります。特に、金額的にも最も多額となる将来得べかりし利益には、多方面からの検討が必要でしょう。
被告側としては、充実した答弁書を提出するほか、必要に応じこまめにしっかりした準備書面を作成し提出する必要があります。このことは、きわめて重要で、これをなおざりにしては、絶対に裁判は有利に運ばないことを銘記しなければなりません。

示談交渉の相手方/ 示談交渉の適格者/ 示談交渉をする場合の注意(被害者側)/ 示談交渉する場合の注意(加害者側)/ 示談交渉の書式/ 賠償金の分割払い/ 示談のやり直し/ 示談屋対策/ 当たり屋対策/ 事故仲介者の賠償責任/ 調停の申立て/ 仮の地位を定める仮処分/ 加害者が財産を隠匿するおそれがある場合/ 賠償請求訴訟/ 裁判を有利に運ぶための訴訟の準備/ 仮執行宣言と執行停止手続き/ 加害者に強制的に損害賠償を支払わせる/ 競売と転付命令/ 判決に不服のあるとき/ 強制保険金請求の手続き/ 強制保険金の被害者請求/ 強制保険金の再度請求/ 強制保険の適用除外車/ ひき逃げをされたときの損害賠償請求/ 強制保険と損害賠償との関係/ 労災保険と損害賠償との関係/ 強制保険金の消滅時効/ 任意保険金の請求の仕方/ 自動車の盗難、火災による保険金請求/

       copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved

スポンサーリンク