調停の申立て
当事者聞で、いかに交渉を重ねても示談のできないときがあるものです。そのような場合には、簡易裁判所に調停を申し立てるのも確かに一つの便法でしょう。
調停とは、和解(示談)、訴訟とともに、民事紛争を解決する方法の一つで、当事者(加害者と被害者、あるいは申立人と相手方)が互いに譲歩することによって、条理にかなった方法および実情に即応した方法で解決する民事上の手続をいいます。
調停は、原則として調停委員会が行なうことになっています。調停委員会は、調停
主任判事一名と調停委員二名以上で構成されていますか、裁判とはちがい、調停室で行なわれますから、楽な気持で自由に発言できます。調停は、もともと互いに譲り合って解決するものですから、当事者が譲り合う気持がなかったり、感情的になったりしたのでは成果はあがりません。一回の調停で成立しなければ二回、三回とくり返しますが、そのうち互いの主張点が明らかになり、調停委員のまとめによって公平な妥協点がみつかって調停が成立することになります。もし、当事者が互いに自己の立場を堅持して譲らないならば、調停は不成立となり、訴訟で争うほかありません。もちろん、不成立になったからといって責任を問われたり、裁判になったとき不利になるということはありません。
調停の長所は、正式の訴訟にくらべて費用が安く、手続が簡単で、日数も比較的短期間で終わることです。また、代理人は弁護士でなくても、家族や知人でもなれますから、弁護士費用はかけなくても済みます。そして、調停が成立しますと確定判決と同じ効力があり、調停で決まったことを履行しないときは強制執行をすることができるのです。
逆に、短所は、調停には確定するまで別段の強制力がありませんので、相手方が妥協しなければ不成立となり、時間つぶしに終わることです。したがって、どちらかが絶対に自己の主張を譲らないということであれば、調停の申立てをしても意味はありません。
調停の申立ては、きわめて簡単です。まず、調停申立人は、相手方の住所、居所、営業所または事務所の所在地を管轄する簡易裁判所に調停を申し立てます。もし、当事者間で合意ができれば、他の地方裁判所か簡易裁判所に申し立てることもできます。
調停申立書には、申立人と相手方の住所、氏名はもちろん、調停申立ての趣旨および申立ての理由を具体的にハッキリと記載しなければなりません。
なお、最近の交通事故の激増のため所定の様式の書面によることが定められましたので、この書面を裁判所の窓口で交付してもらい、これに必要事項を記載して提出します。損害の明細や数額を確定することが困難である場合には、必ず
しも明らかにしなくてもさしつかえありませんが、できればこれらを明確にして申し立てた方が有利でしょう。
裁判所に提出する申立書は、正本一通のほか、相手方の数だけの写し(副本)を添えて裁判所の受付に提出します。
申立書には、「民事調停法による申立手数料等規則」の定める一定額の印紙をはり、かつ、送達料を納付する必要があります。調停の申立をするためには、前述のとおり、手数料を裁判所に納めなければなりません。
手数料は、「民事調停法による申立手数料等規則」に定められておりますから、その価額分の収入印紙を調停申立書に貼ればよいわけです。
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