競売と転付命令

私は、交通事故の被害者ですが、加害者に誠意がないので強制執行により損害賠償を受けることになりました。しかし、そんな加害者のことですから、他にも種々多くの債権者がいるようですし、反面、加害者は他に債権をもっているようです。このような場合、どんな措置をとったらよいでしょうか。
被害者がさんざん苦労して勝訴し、やっと強制執行できるようになったと喜んだとたん、またいろいろの障害にぶつかることも少なくおりません。
その一つに、本問にいう強制執行の競合の場合(競落)があります。加害者が強制執行を受ける段階に立ち至っても、なお、損害を支払うことができないようなときは、加害者がほかにも多くの債務を抱えていることが多いようです。このような場合には、被害者ばかりでなく、他の債権者もとうぜん、その財産に差押えをしたり配当加入をしたりしてきますから、強制執行の競合ということになり、その結果各債権額に応じた割合で配当がなされてしまいます。しかも、税金債権や各種の担保物権(留置権、質権、抵当権、先取特権など)があるときは、これらの権利は一般の債権に優先して配当せられますので、被害者が取得する賠償金は、被害者が考えていたよりもはるかに少額になるようなことも少なくありません。しかも、差し押えたものは換価して現金化する必要上競売の方法がとられますが、いわゆる競売ブローカーにたたかれて、換価が非常な安値にしかならない場合もでてきます。このような場合には、被害者も競売に立ち会い、みずから競落人となって買い取り、後日自分で換価することを考えなければならないでしょう。しかし、被害者側にそれだけの資力があればよいのですが、実際に買いとることは容易ではないようです。

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もし、加害者が他に債 権をもっている場合、たとえば、他に貸金があったり、代金未済などの権利をもっている場合には、その権利の移転を受けて自分で取り立てるという命令を裁判所からもらうことができます。これを転付命令といっています。
転付命令を受けるには、執行裁判所に、差押命令および転付命令の申請をすることになっています。この差押命令は、第三債務者(被告に債務をもっている者)が服務を支払うのを一時停止させるためのものです。しかし、第三債務者が無資力の場合にはどうにもなりませんから、申請するまえに十分調査しておく必要があります。この転付命令を申請する場合にも、弁護士に相談された方が無難でしょう。
なお、加害者がサラリーマンのような場合には、転付命令でその給料を直接その勤め先から取り立てることもできます。すなわち、給与債権のように、その債務者が勤務中毎月一定の債権として生ずるものは、差押債権額の全額に達するまで、その給与金額の一部を毎月差し押え、給料日に転付命令で第三債務者(加害者の使用者)から直接取り立てることもできるわけです。

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