示談交渉の相手方
私の夫は、原動機付自転車に乗って親戚へ行く途中、運送会社のトラックに正面衝突して即死しました。損害賠償を求めるため話し合いをしたいと思っていますが、誰と、どのように交渉したらよいでしょうか。
まず、被害者側からみれば、第一に、民事上賠償責任のある人であり、第二に、そのうち支払能力のある人と話し合いをすべきでしょう。
交通事故の刑事上の責任は、通常、事故を起こした運転者に限られますが、民事上の責任を負う者としては、運転者にとどまらず、自動車運行供用者(自前法三条)、運転者の使用者(たとえば、服用会社、経営者、企業主、雇主)や、その使用者に代わって事業を監督する者(たとえば、事業場の監督者、工場長、運輸課長などのいわゆる代理監督者)など種々ありますから、加害者の職業などから運転者以外の責任者の有無を調べ、もっとも適当な交渉の相手を決めるべきでしょう。また、運転者が未成年老で、その行為責任を弁識するに足る知能をそなえていない場合には、その両親などのいわゆる監護義務者が、交渉の対象となります。
加害者側としては、まず、被害者本人が交渉の対象となりますが、被害者が死亡している場合には、その相続人および被扶養者です。また、被害者の治療費などを支払った人などその事故により現実に被害を受けた人たちも、これに入ることがあります。賠償請求権者の範囲を明らかにするため、被害者の戸籍謄本をとりよせて、その範囲を明らかにするとともに、他に被扶養者や現実の被害者があるかを調査して、あとあと問題が起こらないようにします。
相手方が代理人をたててきたときは、その委任状をみせてもらい、間違いがないかどうかをよく確認しておく必要があります。そして、その代理人が事故係とか交通関係に明るい人であったら、あなたの方も弁護士や信頼できる人に交渉を委任して、相手方に乗せられないよう注意した方がよいでしょう。話合いは一種のかけひきですから、相手方が良心的な人であればよいのですが、そうでないと、交通法規や事故関係に明るい人のペースに乗せられ、大損することもあるからです。
示談交渉の相手方/ 示談交渉の適格者/ 示談交渉をする場合の注意(被害者側)/ 示談交渉する場合の注意(加害者側)/ 示談交渉の書式/ 賠償金の分割払い/ 示談のやり直し/ 示談屋対策/ 当たり屋対策/ 事故仲介者の賠償責任/ 調停の申立て/ 仮の地位を定める仮処分/ 加害者が財産を隠匿するおそれがある場合/ 賠償請求訴訟/ 裁判を有利に運ぶための訴訟の準備/ 仮執行宣言と執行停止手続き/ 加害者に強制的に損害賠償を支払わせる/ 競売と転付命令/ 判決に不服のあるとき/ 強制保険金請求の手続き/ 強制保険金の被害者請求/ 強制保険金の再度請求/ 強制保険の適用除外車/ ひき逃げをされたときの損害賠償請求/ 強制保険と損害賠償との関係/ 労災保険と損害賠償との関係/ 強制保険金の消滅時効/ 任意保険金の請求の仕方/ 自動車の盗難、火災による保険金請求/
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