子供の過失と親の監督責任の関係
子供が加害者であった場合、子供が過失によって事故を起こしたとき、その子供は損害賠償責任を負うか。民法七一二条によると責任能力のある子供はその責任を負うとしております。責任能力ある子供とは、判例上も一定していませんが、まあ、一二〜一三歳とみられます。
しかし、そんな子供が事故をおこすでしょうか。考えられる事例として、一二歳くらいの子供が自転車で他人を負傷させた事故と一八歳の子がバイクで他人を死亡させた事故とを検討します。いずれも、その子供は責任を負うのですが、しかし、そんな子供には資力がないでしょうから、問題はその親が責任を負うかという点に帰着します。
要点をのべますと、このバイクが親名義であったり親が買い与えたものであるとき、または、そのバイクで親のいいつけた用事をしていたときには、当然に親の責任は生じます。また、一八歳の子が会社につとめていて、そのバイクで会社の仕事をしていたのなら、その会社の責任となります。そこで、問題は、一八歳の子がアルバイトをして金をため、自分の名義でバイクを買い、そのバイクで遊んでいたときに事故をおこしたという場合です。判例のなかには、子がアルバイトで金をためたといっても、生活を父と一緒にしているかぎり、父から完全に独立しているとはいえず、結局、父がバイクの運行を支配していたとして父の責任を肯定しています。一二歳の子の自転車の場合も、やはり親の監督義務が問題になりますが、通常、自転車を買い与えたのは親ですから、監督義務違反が成立しやすいでしょう。
結局、一二歳くらい以上の子供が加害者となったとき、親は親であるというだけで責任を負うのではありません。これ以下の幼児の場合は親であることで責任を生じることがあり得ます。親が車の運行を支配していたとき、または監督義務違反があったときに責任を負うのですが、親と子とが同居していたら親の監督責任が肯定されることが多いでしょう。
なお、ファミリーカーの原則というのがあり、これは、家族の一員の名義の車でも家族のみんなが使用していたのなら、その家長にも責任が生ずるというところに要点があります。ですから、一八歳の子のバイクであっても、親もそれを日常、使用していたとなると、その親はファミリーカーの原則で責任を負うと考えるべきでしょう。
子供が被害者であった場合、これは、実は過失相殺の問題です。法律学者の問では、子供は責任無能力者だから過失責任も負わないという議論もありましたが、しかし、現在では、子供が加害者であったときの責任能力と被害者であったときの過失負担能力は別だと考えられています。だから、子供に過失があれば過失相殺されます。この場合、子供が幼児ならば、その親の監督責任が問題になりますが、幼児と親との過失を総合的に考えて、幼児者側の過失としてストレートに過失相殺の対象としてよいと思います。
なお、ついでにのべますと、幼稚園児を引率している先生に過失があったときは、加害自動車側と幼稚園側とが、この園児に損害賠償責任を負うことになります
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