交通事故の加害者に対する刑事処分

事故をおこした加害運転者に対する刑事処分にはどんなものがあるか、というと、つぎのとおりです。
 刑事処分 - 正式裁判(懲役や禁固・罰金)、略式起訴、不起訴
 この正式裁判にかけられるのは重いもので、そのなかでも一番悪い者に懲役や禁固の実刑が言い渡され、情状のよい者には、執行猶予がつけられます。比較的軽いときは罰金ですみます。
 つぎに、略式罰金は、正式裁判にかけるにはおよばない軽いもので、本人の同意があるときには、この罰金をかけられます。
 不起訴とは、刑事上の処分をまったくうけないもので、犯罪をおかしたことはあるが、非常に軽微であって、あえて処分する必要のないものや、さらには、まったく犯罪をおかした証拠のない場合もふくみます。
 なぜ、この刑事処分を調べるべきかというと、要するに、これによって加害運転者の過失の程度がわか るのです。

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過失程度の目安をつけるには、これが大変便利な方法なのです。この正式裁判にかけられるような場合には、その事故運転者の過失は大きく、大ざっぱに考えて、事故運転者の過失が七〇パーセントから一〇〇パーセントとみてよいでしょう。略式罰金にかけられたときは、その事故運転者の過失が四〇パーセントから六〇パーセント見当とみてよいと思います。もし、不起訴になったときは、事故運転手の過失は、ゼロから二〇パーセントくらいと考えなければいけません。
 この過失程度の認定方法は、非常にむずかしく、裁判所でも十分科学的な方法が確立されていない分野です。
 示談交渉開始前に、加害者側の資力や任意保険の有無を調べる必要がありますが、資力や任意保険のある加害者は、相手としてはよい相手であって、被害者としては、いちおう、安心ができるのです。まあ、示談金をとりそこなうおそれは少ないからです。しかし、示談交渉にはいってみて、とんだわからずやで交渉が難航することもあります。もし、加害者に資力があるのに、加害者側がしぶくて、わからずやで、どうにもしようのないときは、これは、さっさと裁判に持っていったほうがよいでしょう。
 問題は、なんといっても、資力のない加害者を相手にするときです。資力はないが誠実さのある加害者なら、長期の分割払いでもよいから、加害者が支払いを実行できる範囲と方法とで示談解決するほかはありません。
 資力もないし、誠意もない相手だったらどうするか。この場合には、実は有効な手段はないのです。ただ、こういう方法はあります。すなわち、検察庁へ行って、この加害運転手は全然誠意がないから、厳重に処分してくれ、という上申書を出すのです。そうすれば、警察や検察庁から加害運転手に対して、きびしく注意してくれるでしょう。こういう役所でいわれれば、相当の効果があるでしょう。ただ注意すべき点は、こういう申立てをしたときに、すでに刑事処分手続きが終わってしまっていては、何の効果もありませんから、早めに、刑事処分がまだ終わらないうちに申立てをしなければなりません。ですから、示談交渉をだらだらやっていて、事故発生から一年以上経過してしまっては、こういう方法も役にたたないでしょう。その点は十分注意してください。

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