悪質な示談屋にひっかかった場合
いわゆる示談屋というものには、組織的に業として示談屋をやっているものと、もう一つは、世間でいわゆる事件屋といわれている人で、個人的に示談屋をやっている人と、二通りあるようです。
組織的な示談屋は、以前は、かなりさかんでしたが、警察の手入れをうけたりして、現在はあまり耳にしません。個人的な事件屋は、世話好きなタイプの人から悪質な詐欺師タイプまで、相当たくさんいるものです。
まず、悪質示談屋にひっかかって、その示談屋が示談金を加害者から取ってきた後、示談屋がその金を持って逃げてしまったらどうするか。これは、れっきとした刑事事件、すなわち横領罪になるので、ちゅうちよせず、すぐ警察に告訴すべきです。これは、一刻を争いますから、すぐに警察に届けてください。
もし、その示談屋がつかまったが、金は使いはたしてしまっていたらどうなるか。被害者が本当にその示談屋に委任状を渡していたのなら、民事上、その示談屋は被害者の代理人ですから、加害者がその示談屋に示談金を支払ったことは、有効な弁済となります。だから、被害者は加害者に対して、もう一度支払ってくれと要求することはできなくなります。被害者は示談屋に請求するほかはありません。示談屋に資力がないと、結局、被害者は何もとれなくなります。もちろん、その悪質示談屋は刑務所へ入れられますが、お金はもどってこないことになります。もし、その示談屋に委任状を渡していなかったのに、加害者が、軽そつにも、示談金を示談屋に渡してしまったのだったら、これはまだ弁済になりませんから、被害者はもう一度、加害者に請求できます。
つぎに、悪質示談屋にひっかかったことがわかったが、幸いにも、まだ、加害者から示談金を受け取っていないときはどうしたらよいか。前にものべたとおり、示談屋に委任状を渡してあると、示談屋は被害者の代理人となり、代理人とは、法律上、本人と同じ権限をもつことになるので、放っておくと大変なことになります。こういうときは、直ちに、委任を取り消さなければなりません。その方法としては、加害者側と、当の示談屋との両方に、内容証明郵便を出して、委任を取り消したことを通知しなければなりません。
まず、加害者側には、「平成○○年○○月○○日、○○県○○市の国道○○号線上で発生した交通事故に関し、私は、○○を私の代理人とし、貴殿と示談交渉をする旨を委任しましたが、都合により、本日、右委任を取り消しました。以後、本事故についての示談交渉は、私以外の者とは、決してなさらぬよう、お願い申し上げます」というようなものでよいのです。
つぎに、当の示談屋に対しては、「平成○○年○○月○○日、○○県○○市の国道○○号線上で発生した交通事故に関し、私は、加害者○○と示談交渉する権限をあなたに委任しましたが、都合により、本日、右委任を取り消します。右、御通知します」という筋でよいのです。
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