示談交渉にはどんな形式があるか
示談交渉を他人にまかせることは、しばしばあることですし、また、そのほうがよい場合もあります。当人同士ですと、とかく感情的になりやすく、その点、第三者にまかせたほうがよいことも事実ですが、ただ、いいかげんな人を代理人にすると、とんでもないことになってしまいます。結局、信頼のおける人に頼むということが一番かんじんなことになります。それはそれとして、示談交渉の結果、話合いが成立したら示談書を作るわけですが、この場合には、被害者、加害者ともにかならず本人が立ち会い、本人が自分の署名(サイン)をして、ハンコを自分で押すべきです。このサインまで第三者(代理人)にやらせると、あとでしばしばトラブルがおきるので、サインだけはかならず当事者本人がやってください。そして、代理人は立会人としてサインしておくべきです。
スポンサーリンク示談書はできるだけ公正証書にしておくこと。これを作成するためには、被害者、加害者ともに公証人役場に行かなければなりませんが、労をいとわず、かならず本人が公証人役場に出頭すべきです。ただ、事情によってどうしても本人が出頭できないときには、他人を代理人として、その人に公証人役場へ行ってもらうこともできますが、このときには、その代理人に委任状と印鑑証明書を渡します。この委任状に書く本人の名前は、かならず、本人の自筆(サイン)にしてください。
なお、示談の内容が簡単な場合、たとえば、加害者が被害者に示談が成立したときに即金で示談金の全額を支払うような場合には、それですべてが終わるわけですから、示談書の形式をどうするかについても、とくに気を使う必要はないのです。
しかし、示談成立後、数年間にわたって月賦で支払うというような場合には、加害者がきちんと確実に支払ってくれるように、示談書の内容に相当頭を使わなければなりません。ことに、加害者が支払いを怠ったたときの制裁をどうするかが重要な点です。法律的知識のない人にとっては、これはなかなかやっかいな問題です。そこで、示談書を公正証書にしておくと、その内容について、公証人という法律の専門家が相談にのってくれるので、結局、すきのない確実な示談書ができるのです。しかも、公証人の手数料は高くはないのです。ですから、被害者にとって、示談書を公正証書にしておくことは、権利を確保するため大事な要点です。示談害を公正証書にしておくことが、一般世間の常識になってもらいたいと切望します。
なお、公正証書より、いっそう確実なものとしては裁判所で作成する書類があります。
まず、訴訟を提起して裁判所の判決を受けると判決書をくれます。判決まで行く前に、裁判官が仲立ち
して、原告と被告との間で話し合いが成立したときには、和解調書を作成してくれます。つぎに、調停を提起したときは調停員が間に入って話し合いをし、当事者の合意ができると調停調書を作ってくれます。和解調書、調停調書は、ともに判決と同一の効力があります。調停はもよりの簡易裁判所へ提起しますが、弁護士をつけなくてもご本人で十分やれますから、これを活用してください。
もう一つ、即決和解というのがありますが、これは、当事者間で話し合いがついたときに、裁判所に即決和解申立書を簡易裁判所に出します。すると、その後、裁判所から当事者に呼出状がきます。その呼出状記載の目時に当事者は必ず出頭しなければなりません。そこで、裁判官は当事者に対し、二、三の質問をして当事者の意思に間違いないと思ったら申立書記載どおりの内容の即決和解調書を作ってくれます。この調書も判決と同一効力を持ちます。この即決和解申立書は素人の人には少々むずかしいでしょう。
結局、素人でできるのは、公正証書と調停申立てでしょうが、前者は公証人役場へ、後者は簡易裁判所へ行けば、いろいろと相談にのってくれます。
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