弁護士の上手な頼み方

弁護士を頼むと金をとられる、というのが、いつわらざる世間の実感のようです。もちろん、これは、弁護士は高いという意味ですが、そのほかに、弁護士には定価がないので、いくらとられるのかわからないという不安感も強いようです。
 そこで、弁護士をうまく使う方法は、弁護士を安く使うことであるのと同時に、始めから、弁護士費用や報酬を明確にさせておくことであると思います。
 もちろん、その前に、示談交渉や保険金をとるのに弁護士を額んだほうがよいか、という問題がありますが、はっきりいって、自賠責保険金(強制保険金)は弁護士に頼まずとも自分でとれます。多少、めんどうなことはありますが、自分で保険会社へ行って相談して手続きをすればよいのです。もっとも、金はかかってもめんどうなことはいやだ、という人は別ですが。任意保険の場合は、その前提として示談交渉が必要になります。そこで、示談交渉に弁護士を額む必要があるか、ということになりますが、だれか知り合いの弁護士で、こまめに動いてくれる人がいればよいのですが、一般的には、弁護士も忙しいので、何回も示談交渉に歩くことをいやがるのです。せいぜい、自分の法律事務所に加害者を呼びつけて話し合うだけで、もし、加害者がこなければ、それで交渉ストップとなってしまうのが実情です。

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そこで、示談交渉自体は本人がやって、ただ、示談金額をいくらにすべきか、示談書の書き方はどうすべきかを弁護士に相談するのがよいでしょう。その場合も、本人が、参考書などを買ってきて、十分研究し、いちおう、自分自身で示談金額(請求金額)の明細書や示談書の原稿を書いてみるのです。そして、それを弁護士にみせるのです。そして、不適当なところを弁護士に修正してもらうのです。こうすれば、弁護士のほうも手間がはぶけて助かるのみならず、修正程度ですと、弁護士もあまり多額な相談料を請求できないわけです。もし、示談交渉から示談書作成や示談金取立てまで、すべて弁護士に一任すると、やはり事件を一件処理したことになりますので、示談金の一割くらいは弁護士にとられることになります。ですから、このような工夫も大切なことになります。
 しかし、裁判にする場合には弁護士を頼まなければならないでしょう。もっとも、裁判にならなくても、むずかしい後遺症の問題や複雑な死亡事故のようなときには、示談交渉にも弁護士を額む必要はあるでしょう。示談交渉のときは、要するに程度の問題になりますが、裁判のときには、裁判手続きという一定の規則があるので、やはり、弁護士を頼むべきです。
 ただし、法律上では、被害者本人が裁判をやるならば、弁護士を頼まなくてもよいことになっています。これを本人訴訟といいますが、簡易裁判所などでは、本人訴訟も多数みられます。しかし、本人が裁判所へ出られないときは代理人を立てなければなりませんが、代理人は弁護士でなければならず、弁護士資格のない人は、親兄弟でも代理人になれないのです。
 弁護士を頼むとき、どうしたら安く使えるか、まず、法律扶助協会へ行って扶助を頼むことです。法律扶助協会というのは、国が資金を出している団体なので、いわば公的な団体です。この協会の仕事は、裁判をやらなければならないが、裁判の費用がなくて困っている人々に、その費用を貸しつけることです。しかも、この協会が弁護士をつけてくれて、その弁護士の費用を貸してくれるのです。もちろん、費用をただでくれるのではなく、貸してくれるのですから、裁判が終わったあとで、これを返さなければなりません。しかし、交通事故による民事訴訟の場合には、勝った人の頼んだ弁護士費用も、負けた人が支払わなければならないようになっています。
 一般の民事裁判では、勝っても負けても、自分の頼んだ弁護士費用は自分で負担しなければならないのですが、交通事故のような不法行為による損害賠償請求訴訟の場合にかぎって、弁護士費用の敗訴者負担の制度があるのです。理論的にいうなら、弁護士費用も、不法行為によって発生させられた損害だ、というわけです。だから、交通事故の被害者が加害者を相手にして訴訟をおこしたとき、被害者が勝訴すれば、被害者の頼んだ弁護士の費用も加害者が支払わなければならないのです。もちろん、被害者が全面的に敗訴すれば、この弁護士費用もとれませんし、また、被害者側の過失が大きくて、被害者側が一部敗訴したような場合は、弁護士費用も一部しかとれないこともありますが、しかし、交通事故の民事訴訟で被害者側が負けるということは、あまりないことなのです。
 だから、多くの場合は、被害者の頼んだ弁護士の費用も加害者側からとれるとみてよいでしょう。したがって、加害者側からこの費用をとって、それから、法律扶助協会へ返せばよいので、被害者としては、裁判費用、弁護士費用になやまされないですむのです。
 ただし、この法律扶助協会の趣旨が、生活に困っている人を助ける、というところにあるのですから、だれでもが法律扶助協会の扶助を受けられるわけではありません。原則としては、生活保護を受けているような人だけに扶助を与えることになっているのですが、交通事故の被害者は、いわば災害にあった人々 ですから、生活保護を受けるほどではなくても、いちおう、生活が楽でないという証明をすれば、扶助を受けられるようになっています。とくに、一家の支柱たるご主人が、交通事故で死亡されたような場合は、遺族は、すぐ生活に困るわけですから、こういうかたは、どしどし法律扶助協会を利用してください。

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