交通事故の示談交渉前にそろえておく書類

示談交渉にも、相手を説得する資料が必要です。この資料とは証明書です。まず、死亡事故のときには、事故証明書(警察でもらう)、亡くなったかたの除籍謄本や遺族の戸籍謄本それから、亡くなったかたの生前の収入の証明書が必要です。傷害事故のときには、事故証明書、病院の診断書と診療明細書、負傷された人の勤務先の休業証明書、それに、その人の収入の証明書です。そのうち、重要なのはつぎの二つです。
 収入の証明書。被害者側にとって、とにかく、一番大切なのが、この収入関係の証明書です。この収入額を証明するのは被害者側の責任であり、この証明ができないときは、収入がなかったことにされてしまいますから、その点は十分頭に入れておいてください。
 被害者が、公務員とか、相当の規模以上の会社のサラリーマンの場合には、この収入の証明はすこぶる楽にできます。勤務先の給与証明書とか源泉徴収票でこと足りるからです。
 しかし、勤務先の会社が小さなところで、経理もしっかりしておらず、源泉徴収も本当にやっているのかどうか疑わしいときには、源泉徴収票だけでは足りず、納税証明書も必要になります。その理由は、源泉徴収票は、勤務先の会社なり商店なりがハンコを押して作ってくれるものですから、その会社なり商店が信用のかけないところである場合には、その源泉徴収票も信用がおけないからです。裁判の実態をみても、ふだん、源泉徴収などしていないくせに、裁判に必要だといわれて、あわてて源泉徴収票を作った、という例もあります。要は、加害者側を納得させることですから、源泉徴収票だけでは相手が承知しないときは、すすんで納税証明書を役場からとってきて、これをみせるべきです。

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問題は、自分で商売や営業をやっている人です。納税証明書とか確定申告書の写し等、要するに税金関係の書類で収入を証明することが一番確実であって、これなら、裁判所でも保険会社でもフリーパスでとおります。ところが、残念ながら、申告額はかなり少額であって、実際はもっと収入があったのだ、というときに苦労するのです。こんなときは、商業帳簿類、取引先の証明書、貯金通帳、保険の掛金の領収書、その他、あらゆる書類を総動員して、収入を証明するほかはありません。
 一例を示すと、あるビニール加工業者の場合ですが、死亡前三年間にわたり、原料仕入先の証明書と自分のところの仕入帳とから、一年ごとの総仕入額を調べ、ついで、売掛先の証明書と自分のところの売掛帳や売掛伝票から一年ごとの総売掛額を調べ、この差額を荒利益として算出しました。その荒利益から、工場の賃借料、工員人件費、光熱費、水道費、労災掛金、機械の償却費等をさしひいて年間平均純利益を出したりいたしました。このように、とにかく、なんらかの証明書類で収入を証明するのです。
 農業、水産漁業の場合等も原理は同じですが、農業の場合には税務上の反当たり標準収益額表を利用するのもよい方法です。
 診療明細書(診療報酬明細書)これは、ふだん、あまり耳にしない言葉ですが、診断書とは違います。診療明細書とは、読んで字の如く、治療内容の明細書ですが、これには、どんな治療をしたかという明細のほか、入院日数の明細、通院期間や通院実日数の明細が記入されています。もちろん、治療費の明細も書いてあります。治療費や入院費は、この診療明細書でなくとも、病院の請求書や領収書でよいのですが、慰謝料算定の基準になる入院期間や通院期間、通院実日数などは、この診療明細書がないとわからないのです。慰謝料を算定するために、診療明細書は絶対に必要な書類なのです。ですから、傷害事故のときには、示談交渉の前に、必ずこの診療明細書を病院からもらってきておいてください。
 ただ、この診療明細書を書くには、相当の手間がかかるので、忙しい病院では、すぐには書いてくれません。一週間、ときには一カ月くらいもまたされることがあります。しかし、とにかく、これは必要な書類(保険金をとるためにも必要な書類)ですから、どうしても病院からもらってきて用意しておいてください。

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