自損事故保険の損害処理
自損事故保険は傷害保険の一種として、原則として搭乗者傷害保険と同様の処理になりますが、てん補責任の発生要件、被保険者の範囲などが異なっているため多少の相違があります。
自損事故保険の支払いは被保険者に自賠法三条に基づく損害賠償請求権が発生しないこと、すなわち自賠責保険などによる支払いがなされないことが要件となるので、事故原因、事故状況、被保険者の状況などの詳細とともに、被保険自動車および相手自動車の登録番号、自賠責保険などの保険会社名、証明書番号などの通知が必要とされています。また、死亡・傷害の区分、主な傷害の部位・程度、入・通院の区分など被保険者の被った傷害の状況も併せて保険会社に通知することとされています。保険会社はこれらによっててん補責任の有無を決定することになりますが、その前提として被保険者が単独事故の保有者または運転者以外の場合は、自賠責保険などによる支払いの有無を確認するため、被害者請求の手続きをとるよう指示するのが通常です。
保険会社のてん補責任の確定には、各被保険者ごとに自賠責保険の保険金、責任共済の共済金または政府の保障事業からの損害てん補金のいずれもが支払われないことの確認を要しますが、その確認は次のような書類を取り付けたうえで事故の状況、被保険者の状況を把握することによって行います。
単独事故の保有者または運転者の場合は、原則として「交通事故証明書」、それ以外の場合で自賠責保険などによる支払いがなされないことが確定した後に請求する場合には、保険会社などによる支払いがなされない旨の証明書類の提出が求められます。また、自賠責保険などに対する被害者請求を行うことなく自損事故保険の保険金を請求する場合には、保険会社は自動車保険料率算定会に自賠責保険の有無責の認定を依頼し、自賠責保険の保険金が支払われない事故である旨の認定書類を取り付けます。
医療保険金の治療日数の認定基準は、搭乗者傷害保険とまったく同じです。すなわち、生活機能または業務能力の滅失または減少とは、職業的な仕事にとどまらず、日常生活における起居動作の能力低下を含むものとされます。また、医師の治療を要件としているため、売薬で治療した程度の傷害は対象となりませんが、骨折、打撲などの場合に限って、柔道整体師による施療を受けた場合も認められます。なお、傷害の部位・程度、休業・欠勤・業務支障日数、入・通院日数、金治療日数なども考慮されます。
自損事故保険の保険金請求に際しては、保険金請求書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書、休業証明書などの書類のほかに、自賠責保険などによる支払いがなされないことが確定した後に請求する場合には、保険会社などにより支払いがなされない旨の証明書類を提出します。なお、自損事故保険の保険金の支払いを受けた後、被保険者が異議の申立てや訴訟により自賠責保険などからも支払いを受け二重利得となることを避けるため、保険金支払いに際し被保険者から、後日、自賠責保険の保険金などを受領した場合には自損事故保険の保険金を返還する旨の念書を提出するのが通例となっています。なお、念書の提出を受けた保険会社は、自賠責保険の元受保険会社などにその旨を連絡することとされています。
保険金請求書類が提出されると、保険会社は支払保険金の算定を行い、死亡保険金については被保険者の相続人に、後遺障害保険金および医療保険金は披保険者本人に支払います。また、医療保険金については保険会社のてん補責任が確定している場合に限り、一〇万円ごとに内払いも行われます。
自動車保険の種類と損害/ 自動車保険契約の方式/ 自動車保険の保険料/ 自動車保険の経営指標/ 自賠責保険の成立と概要/ 対人賠償責任保険の基本的仕組み/ 自損事故保険の基本的仕組み/ 無保険車傷害保険の基本的仕組み/ 搭乗者傷害保険の基本的仕組み/ 対物賠償責任保険の基本的仕組み/ 車両保険の基本的仕組み/ 他人の車を借りたときの保険/ 損害保険代理店の実務/ 各保険共通の基礎的実務/ 自賠責保険の損害処理/ 対人賠償責任保険の損害処理/ 自損事故保険の損害処理/ 無保険車傷害保険の損害処理/ 対物賠償責任保険の損害処理/ 車両保険の損害処理/
copyrght(c).道路と交通の豆知識.all rights reserved