自動車保険の経営指標

 損害保険会社において自動車保険の経営成績を表す指標はいろいろありますが、ここではそのうち次について説明しましょう。
 収入保険料、いわゆる保険の売上高であり、通常は当該会計年度中の正味収入保険料(収入保険料総額から解約などによる返灰分を控除したもの)としてとらえられます。その多寡あるいは対前年増加率が、損害保険会社の規模の大小または優劣を表す指標となるわけです。具体的には保険会社相互間(全国または各地域)、同一保険会社内の営業組織相互間などの横断的比較指標として使われることが多いようです。

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 記収入保険料に対する同一期間中に現実に支払われた保険金の割合を指し、通常は百分率で示されます。経営の質的優劣を表す横断的比較指標として用いられることが多いものです。
 なお、自賠責保険においては、契約年度別にみて、その年度に保険期間が開始するすべての契約が終期を迎え、保険金の支払いが完了するまでの保険成績による損害率を用いることがあり、損害率といわれています。
 損害率には二つの問題点があります。その一つは損害率計算の分子である支払保険金はその年度中に現実に支払われたものにとどまっており、すでに事故が発生していても未払のもの、すなわち未払保険金が算入されていません。自動車保険でも特に賠償責任保険は事故発生から示談解決、保険金支払いに至るまでがしばしば長期化するため、その間かなり高額な未払保険金が計上されています。
 第二に、分母である収入保険料はその年度の保険料の額をそのまま用いており、いわゆる既経過または未経過の計算を行っていないため、しばしば過大に表示される恐れがあります。特に最近の自動車保険のように、前年度に比べて収入保険料の増加率が高い場合には、その傾向が強くなります。したがって損害率は自動車保険事業経営の実態を十分表していないきらいがあるといえましょう。
 そこで、分子の支払保険金に当年度未の未払保険金と前年度未の未払保険金の差額を加算(場合によってはさらに未報告事故の支払見込額を推定加算することも必要です)することによって、当年度の発生保険金に修正し、分母の収入保険料は前年度契約の未経過保険料(未経過分として当年度へ繰り越されたもの)および当年度契約の保険料のうち当年度中の経過割合によって算出した既経過保険料に修正することによって、実態に近い損害率を把握する必要があります。
 経費率は前記収入保険料に対する同一期間中に支出された各種経費(保険会社の人件費、物件費、代理店手数料など)の割合を指し、通常は百分率で示されます。他の産業と同様、経費支出の多寡は保険会社の営業方針によって左右されることが多く、その点からも経費支出額ならびに経費率は保険会社の経営効率を評価するうえで、最も興味ある指標といえましょう。

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