自動車保険の保険料
自動車保険の保険料はいわば自動車保険という商品の販売代金ですが、この保険料の大部分は実は自動車保険料率算定会(自動車算定会)が財務大臣の認可を得て決めたものです。そして、各損害保険会社はその保険料によって、自動車保険を販売しなければならない仕組みになっています。
自動車算定会は「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて、昭和三十九年一月に設立された特殊法人です。損害保険会社全社がその会員となって構成していますが、統計資料に基づいて任意自動車保険ならびに自賠責保険の保険料を算定することを主たる目的とする団体です。
一般自動車保険の基本保険料が対人賠償責任保険、車両保険などの保険種目ごとに用途・車種別(自家用小型乗用車、営業用乗用車などの区別)に定められているのに対し、自家用自動車保険の場合は、基本契約に対応して一本の保険料が車種別に定められています。いずれも保険期間一年に対応する保険料であり、保険会社が引き受ける保険金額に対して定額で示され、火災保険のように保険金額千円に対する比率(料率)では示されていません。わずかに搭乗者傷害保険料(自家用自動車保険の場合は増額分のみ)が、引受保険金額に料率を乗じて計算される仕組みになっています。
自家用小型乗用車など五車種を対象とする車両保険、これら五車種を対象とする一般自動車保険の対人賠償責任保険と対物賠償責任保険、ならびに同じく自家用小型乗用車など三車種を対象とする自家用自動車保険の基本契約は、ノンフリーと契約の場合は運転者の年齢条件によって基本保険料が異なっています。運転者年齢条件は、「年齢を問わず担保」「二十一歳未満不担保」および「二十六識未満不担保」の三区分になっており、順次割安となっています。これはアメリカのニューヨーク州などの料率制度にならったもので、一般に若年運転者の事故発生率が高いことによるものです。
任意自動車保険の保険料については、基本保険料に対して各種の割引、割増の制度があります。
ノンフリート契約の場合、無事故割引つまり新規の契約が一年間無事故だと、翌年の継続契約について一〇%の割引が適用され、以後無事故が続くと毎年割引が一〇%ずつ加算されて、最高は五〇%まで適用可能です。
無事故割引を適用されていた契約も、事故があると翌年の継続契約には割引が適用されなくなりますが、前年の契約の割引率が三〇%以上のときは、事故一件(対人賠償責任事故、自損事故、無保険車傷害事故のいずれかを含む場合は一事故を二件と数えます)につき二〇%を減ずるにとどめることになっています。
第二種デメリット料率、無事故割引の適用されていない契約において、事故が三件(対人賠償責任事故、自損事故、無保険車傷害事故のいずれかを含む場合は一事故を二件と数えます)以上あった場合は、翌年の継続契約に対し第二種デメリット料率が適用され、基本保険料の二〇〜一〇〇%の割増保険料が必要となります。
運転者限定割引、自家用小型乗用車など三車種に限り、運転者限定特約を付した契約に適用され、割引率は一〇%となっています。なお、限定の方法には主たる運転者を含めて三名以内に限定する記名方式と、主たる運転者(賠償責任保険の場合は記名被保険者)および同居の親族に限定する家族限定方式がありますが、限定された運転者以外の者が運転した場合は保険金支払いの対象になりません。
総合契約割引、一般自動車保険については対人、対物賠償責任保険および車両保険を一保険証券で同時に付保する場合に、総合契約割引が適用されます。また、自家用自動車保険の場合は、一保険証券で基本契約と同時に付保された車両保険料について適用されます(基本契約の保険料については、総合契約割引分を織り込み済です)。割引率はいずれも五%となっています。
フリート契約の場合、優良割引および第一種デメリット料率、フリート契約については、フリート契約者ごとめられた年一回の料率審査日の六ヵ月前から過去一年間(成績計算期間)のフリート全体の保険成績により、料率審査日以降一年間の適用料率を定める仕組みになっています。保険成常、成績計算期間中の経過保険料に対する支払保険金(事故は発生しているが計算期間未において未払いのものを含む)の比率、すなわち損害率によって表示され、総付保台数と損害率の組み合わせにより適用される優良割引率または第一種デメリット料率(割増率)が決定されます。ここでいう経過保険料とは、当該計算期間中および前計算期間中に付保された契約の保険料のうち、当該計算期間中における経過割合によって算出したものをいいます。なお優良割引率は最高六〇%まで、第一種デメリット料率は最高三倍まで設けられています。
フリート多数割引、フリート契約者が一保険証券で一〇台以上の所有・使用自動車を付保する場合に適用され、割引率は五%となっています。
総合契約割引、ノンフリーと契約の場合とまったく同様です。
自賠責保険の保険料自賠責保険の保険料は、用途・車種別、保険期間別に定額で示され、本土用、本土離島用、沖縄本島用および沖縄離島用の四種に分かれていますが、死亡事故発生契約に対する追加保険料を除いては、保険料の割引・割増制度はありません。
なお自賠責保険の保険料は、自賠法の規定により、保険会社の能率的な経営の下における適正な原価を價うものでなければならないと同時に、利益を生むものであってはならないとされています。
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