各保険共通の基礎的実務

 保険証券は一片の紙片にすぎませんが、万一事故が発生した場合に、間違いなく損害をてん補するという、信用を化体しているものだといわれています。したがって、自動車保険の保険金支払いの本質は、適正、妥当な損害てん補にあるとされています。
 保険会社は事故通知を受け付けると、保険契約の内容を確認し事故の正確な事実関係を調査把握して、約款・法規の公正な解釈、適用によりてん補責任を決定します。そのうえで妥当な損害額を算定して、迅速に保険金を支払います。また、自家用自動車保険契約においては、これらの機能のうえに示談交渉サービスという新たな機能も加わります。すなわち、保険会社は自動車事故に伴う損害賠償問題の解決という総合的サービスを提供していることになります。

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 自動車事故が発生した場合、当事者である保険契約者または被保険者はまず事故現場で死傷者の救護にあたり、危険の防止、損害の防止軽減などの措置を講じます。それと同時に相手方や証人を確認し、現場の保存、写真撮影、損害賠償の話合いなど、それぞれの事故に応じた処理が必要となります。
 保険会社への迅速、正確な事故通知も不可欠です。保険契約の内容、事故や損害の内容、事故後の措置および相手方との交渉経過などを、詳細かつ正確に保険会社へ直接または代理店を通じて通知します。この事故通知により、保険会社はてん補責任の有無、現場あるいは修理工場での立会、賠償責任負担の可否、示談交渉の進め方、保険金請求に必要な書類の整備などについて、保険契約者または被保険者あるいは代理店、修理工場などと打ち合わせをします。また警察へは必ず届け出るよう指示し、交通事故証明書の提出を依頼します。警察に届出のない事故については、やむを得ないときに限り交通事故証明書に代えて第三者の目撃証明書、交通事故証明書取付不能理由書、現場の写真、事故車両あるいは賠償物件の被害状況の写真の提出を受けてから事故処理に入ります。
 保険会社に事故通知があると、内部処理として保険契約の内容の確認と保険料入金の確認が行われます。すなわち、保険契約の内容については、事故を起こした自動車と契約上の披保険自動車との同一性、その保険契約が当該事故に対して適用されるかどうか、保険金額、免責金額、契約条件などについて確認します。特に車両保険については、昭和五十三年十一月の約款改定により、事故の回数によって免責金額を増額する制度が導入されたため、その対象契約については車両事故の回数を確認し、当該事故に適用される免責金額を決定し、早期に保険契約者または被保険者などに連絡する必要があります。また、保険料入金の確認は保険期間内の事故であっても、保険料領収前の事故については保険会社にてん補責任がないからです。
 次に、保険会社は将未支払うであろう保険金の額を見積もって、未払保険金を計上します。自動車保険が損害保険のなかで最大の売上を占めるに至った現在、その未払保険金の適正な計上は、迅速・適正な保険金支払いに不可欠であるばかりでなく、保険金支払い実務を通じて得られる諸種のデータを提供するという観点からも重要な業務といえます。
 損害てん補の前提として、事故の正しい事実関係の把握が必要です。そのため、事故発生の事実、事故の発生状況と原因、事故と損害との相当因果関係の有無、事故の責任の所在、割合、損害物件と損害額、などを調査のうえ保険会社のてん補責任の有無と内容が検討されます。さらに、対人事故であれば状況によって、保険会社の社員が遅滞なく警察署、現場、病院などにいき、運転者、同乗者、目撃者、証人、事故の相手方などに面談し、事故の実態調査と損害の確認などが行われます。また、車両事故や対物事故の場合には、前述のような事故の事実関係の調査とともに、修理工場などでの立会調査により、損害物件についてその損害状況を確認し、損害額の算定に備えます。

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