自動車事故で健康保険は使えないか
A氏は自宅の近くの商店街をブラブラ歩いていたとき、大工の見習である一七歳の少年のオートバイに後方から接触され、大腿骨骨折の重傷を負い、近くの病院に入院しました。長期の治療を要する見込みで、相当治療費もかさみそうです。加害者の少年は資力もないようなので、健康保険で治療してくれるよう頼んだところ、病院は「自動車事故は健康保険ではかかれません」と断わられました。そうゆとりのある生活ではないので、自費だと大変である。一体そんなことは、通るものでしょうか。
スポンサーリンク 交通事故にあった被害者が、健康保険の被保険者、あるいはその扶養家族である場合に、怪我の治療に健康保険は使えないかどうかの問題である。よく耳にすることであるが、怪我をして病院に行くと「自動車事故では、健康保険はかかれません」と断わられ、やむを得ず自費で治療を受けた例が多く見られます。
これは病院側が、治療費をめぐる加害者、被害者の争いにまきこまれたくないということや、事故の怪我に多くみられる大手術を健康保険でやると割に合わないといった考え方からきているものと思われます。
しかし、健康保険で治療できないなど絶対にありません。厚生省から「自動車事故でも保険給付が受けられることを被保険者に知らせるように」という通知が出されています。自動車事故で、業務外の場合は、健康保険、業務上の場合だと労災保険によって、それぞれ医者にかかることができます。
もともと自動車事故による損害の賠償は、加害者に賠償責任があるので、かかった治寮費は当然加害者が負担すべきものです。
したがって、加害者が健康保険と関係なく、加害者の方で支払ってくれるとしたら、それにこしたことはありません。しかし自費患者として治療を受けると、治療費も高くつき、加害者に支払能力がなくて、自賠責保険でまかないきれない場合に、被害者にとって健康保険が適用されるか否かは重大な問題です。
そこで先ほどの厚生省の通知が椙されたわけです。
自動車事故による傷病について健康保険で行なう給付は、
(1) 療養の給付(病院などで受ける治療代など)
(2) 療養費(現金の支給でさきに病院などで治療費を立て替えてやた場合にもらえるもの)
(3) 傷病手当金
(4) 埋葬料(死亡のとき)
(5) 高額療養費などです。
これら支給を受けた分は損害賠償額から控除されるので、加害者に請求する場合は当然損害額から差し引かなべてはなりません。
また保険給付を受けた加害者に対する治療費などの損害賠償請求権社、給付を受けた範囲内で健康保険組合などの保険者も移ります。これを損害賠償請求権の代位収得といいます。
したがって被害者としては保険給付を受けた部分については、勝手に放棄したりする示談に応ずることはできません。健康保険組合は、加害者に保険給付を行なった限度で、損害賠償の請求をするわけです。
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