過失の割合は損害賠償にどう影響するか
ある本を読んだところ、「自動車事故の過失は、追突事故による以外の大部分は、被害者側にも何らかの過失があって、それが事故発生の原因になっている。歩行者の死傷事故でさえ、被害者無過失のケースは、警察統計上一〇%から二〇%くらいであるといわれている」と書かれていました。したがって、自動車事故については被害者、加害者双方に過失がある場合が多いようです。一体過失相殺とはどういうものをいうのか、また、それは損害にどのように影響するのでしょうか。
スポンサーリンク 過失相殺というのは、甲車と乙車が事故を起こした場合、その事故発生の原因が甲車側に七〇%あり乙車側に三〇%あったとすると、乙車が甲車に対して事故によって生じた損害賠償の請求をしてきたとき、甲車は乙車にも三〇%の過失があったから、その分を差し引いた七〇%分しか負担しないでよいということをいい、裁判では、このことを過失を斟酌するといっています。
この過失相殺というのは「事故による損害の公平な分担」ということから考えられたことです。
自動車事故で被害者にどれくらいの過失割合があったかということは、事故の態様によって千差万別ですが、その過失割合の決め方は非常にむずかしく裁判所においては予の決め方は裁判官個人の判断にかかっており、特に基準になるものもなかった関係から、同じような事故でも過失割合は非常に異なったものに
なっていました。
しかし、これでは困るので、東京地方裁判所の裁判官が中心になって、過失割合の基準がつくられ利用されており、それまでバラバラであったものを、なるべくバラツキを少なくしょうとの努力がなされています。
つぎに過失相殺の具体的例をあげて損害賠償請求額がどのようになるかをみてみましょう。
歩行者が横断禁止の車道を横断していて制限速度内で進行してきた車にはねられて死亡したとしましょう。その死亡者の過失利益、慰謝料、葬儀費用などの損害が二五〇〇万円になったので、加害者に損害賠償請求をしたところ、加害者は歩行者にも過失があったと争ったとします。
いま、この過失割合をみると、歩行者が車がどれくらい近づいていたときに横断したかとか、走って渡ったとかによって過失割合は違ってきますが、一般に車五〇%、歩行者五〇%の過失があるといわれています。
そうすると被害者の遺族は加害者からは二五〇〇万円のうち五〇%を差し引いた一二五〇万円しか賠償を受けられないことになります。
つぎに道路幅八メートルの道路がそれぞれ交差していて交通整理の行なわれてない見通しの悪い交差点において、同じくらいの時速(四〇キロメートルくらい)で出合い頭の衝突をした例を考えてみましょう。
甲車の方には一時停止の標識が設置されており、乙車の方には設置されていなかったとすると、甲車は一時停止違反、乙車は徐行義務違反ということで、その過失割合は甲が八〇%、乙が二〇%と考えられています。
その事故で甲は車とケガのため二〇〇万円の損害、乙は一〇〇万円の損害が生じたとすると、甲は乙に対し二〇〇万円の二〇%四〇万円は請求できるが、乙は甲に対し一〇〇万円の八〇%の八〇万円を請求できるわけで、差引、甲は乙
に対し四〇万円の賠償をしなければならないことになります。
過失割合をどのように決めるかの要素は、その通行するときの優先権の有無、強弱が基本的に重要ですが、この他にも弱者保護の原則(過失割合が五分五分、というどきに適用されるもの、たとえば歩行者対自動車の場合は歩行者保護のため二〇から三〇%くらい歩行者に有利に認めるなど)、信頼の原則(これは相平方も道路交通法を守って通行してくると信頼して運転すれば、過失はないとされる)などをもとに決められるものです。
このように交通事故における過失相殺の果たす役割はきわめて大きい。したがって損害賠償の請求をする際には、たとえば人身事故の場合の加療中の諸雑費をより多く認めさせるよりは、この過失相殺を自分に有利に導くことに努力することが大切です。
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