ダンプカーにはねられたときの賠償は

 甲君は道路を通行中、後方から疾走してきたダンプカーにはねられ、左大腿部骨折など三か月の入院を要するケガをしました。
 幸いに生命に危険はありませんでしたが医療費や長い間働けなかった損害は、莫大なものでした。
 この事故の原因については、ダンプカーの運転手の一方的な過失によるものであったことが、警察の調べなどからも明らかでした。
 また、そのダンプカー運転手は乙商店の丙君という男で、事故を起こしたのは店の仕事で荷物を運ぶ途中の出来事であることが判明しましたた。

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 ところが甲君が損害賠償を求めようにも丙君はほとんど財産もなし、全然支払能力がないといってよい状態なのです。
 そこで甲君は丙君の雇主である乙商店の主人のところへいって損害を払ってくれるよう交渉しましたところが、乙商店の主人は「自動車は店のものだが、事故を起こしたのは運転手個人の過失であるし、しかも丙君がいまも店にいるならともかく、あの事故を起こしたので、解雇したからもう店としてはいっさい無関係である。したがって損害を払う義務はない」とつっぱねました。
 甲君はその日はそのまま帰りましたが、どうも納得がいきません。
 そこで、知り合いのA弁護士を訪ねて相談してみたところ、弁護士の話はこうでした。
 事故を起こしたの社運転手丙君の過失であるとしても自動車の所有権は乙商店であり、丙君はその商店の仕事で品物を運搬中に事故を起こしたのであるからこの場合、乙商店に責任がないとはいえません。
 さらに乙商店が会社でない個人商店なら、そこの主人が損害賠償の責任を負わねばならないし、会社なら、乙商店自体が責任を負うこととなります。
 また乙商店で丙君を解雇したからといって、乙商店の主人あるいは乙商店自体の損害賠償の責任がなくなるものではないから、そんなことは責任免除の理由にならないということでした。
 以上のようにして自動車所有者の責任は相当にキツくできていますが、これに追いうちをかけるような判決が東京地方裁判所で出ています。
 これはタクシー会社でよく行なわれている、いわゆるハンドル貸しに対するものです。Aタクシー会社のB運転手が会社の知らないCにハンドル貸しをしてCが自動車事故(轢き殺し)をしたという事案です。
 この判決は、タクシー会社にハンドル貸しとはいえ、七八〇万円を支払わせたわけで、一人あたり、賠償額では、その当時は、日本最高のケースでした。
 甲君の場合にも、ここに述べたと同じ理由で、会社の賠償責任を認めているのです。

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