事故による休業補償はどこまでか

 新宿の○○時計屋は靖国通りに面しており下り坂途中にあります。坂の中途にバス停があり、自動車の往来も激しい。交通事故の起こりやすい地点でかねがね心配していました。
 ある日、このバス停にバスが停止した際、坂の上から、このバスに追尾して走ってきた肥料満載のトラックが、ブレーキの故障で止まろうにも止まれず、左にハンドルを切って歩道に乗上げたうえ、電柱を倒し、○○時計屋の店頭につっ込んで、ようやく停車しました。
 さいわい店内の人々は無事でしたが、ショーウインドゥはじめ店内はメチャメチャ、時計、指輪、眼鏡などの商品はひきつぶされたり、野次馬に持ち逃げされて、甚大な損害をこうむりました。
 ○○時計屋では、との事故により店内の修理をしなければならず、「どうせ修理するなら改造もいっしょに」いうことで約二〇日間も休業して工事を行ないました。
 一方、加害者の会社には損害賠償を請求、商品の被害については、こわれたものは加害者が買い取る。盗まれたものは、証拠が不十分だから、申出額の半分、店舗の改造修理は修理に要した費用はもつが、改造代はもてない、といったところで話はついたが、加害者は休業中の補償はどうしてももてないといいます。

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 そこで、こんな場合の休業補償はどうするかという問題ですが、加害者の故意過失による交通事故によってこうむった損害をうめて原状回復をするためには、どうしても休業しなければならないといった場合に、加害者はその休業中の収入源を賠償する義務があります。
 もともと、こういった自動車事故は法律的には「不法行為」で取り扱われる。そしてこの場合、故意で、つまりワザと時計店に突込んできたわけでもあるまいから「過失」による不法行為です。
 過失による不法行為でも、損害賠償の責任を負わされることは当然であり、場合によっては直接の損害のほか、ここに述べたような、休業による収入滅をも填補すべきかどうかが問題となります。
 しかし、この義務はあくまで原状回復の期間内に限られるので、この事故のように修理だけでなく、改造の期間までも加害者が面倒みなければならないというものではないのです。すなわち、損害賠償は被害者の受けた損害を埋め合わせるための制度であり、それ以上に被害者を利得させるものではありません。ここに、損害賠償請求の限界があるわけです。
 修理と改造との時期的区別を明確にできない場合が多いが、修理する大工に、修理だけであれば何日間、改造を加えて修理するのであれば何日間と工事見積りを出してもらい、これで休業補償日数を算出するのが普通です。
 また休業補償額は過去半年または一年間の営業実績を集計して、これで一日または一か月の平均売上高を算出して決定するのが常識です。しかし、新学期になるとグンと売上げがあがるなどの特別な事情があるときは、これを考慮して、かならずしも平均売上高にこだわらなくでもよい。

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