入院費も払えないときはどうするか

 Aさんは、歩行中にBの自動車にはねられ、左大腿骨骨折等の重傷を負い、入院六ヵ月、通院はすでに一年になっています。
 しかし、Aさん自身はあまり資力はなく、しかも、Bも強制保険(自賠責保険)がかけてあるだけで任意保険はなく、その他、資産はほとんどなく、そもそも誠意もまったくない人間でした。Aさんは入院費も払えませんでした。このようなときはどうすればよいのでしょうか。

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 加害者側に資力も誠意もない(もちろん、任意保険もかけてなかった)ときには、一体、どうしたらよいのか。おそらく、交通事故における一番むずかしい問題だろうと思われます。
 もし、加害者側に誠意や任意保険がなくても資力(たとえば土地建物等)があれば、最終的には裁判を起こしてやれば加害者から損害賠償金をとれます。しかし、裁判をやって解決するには、順調にいっても一年前後はかかります。その間、被害者はやっぱり入院費等に困ります。そういうときの対策を考えてみましょう。
 (1) 強制保険の仮払い請求と被害者請求
 まず、強制保険金を早くとることですが、加害者の同意とかハンコとかがなくても、被害者のハンコだけでとる方法として、仮払い請求と被害者 請求とがあります。
 仮払いは、自賠責保険のうち、治療費等に対して支払われる金です。この仮払金は、いわば、保険金の一部を内金請求するものですが、一定額がきめられています。この定額以上を請求するときには、むしろ、被害者請求のほうが便利です。
 治療費の領収書をつけて請求するが、いったん病院に支払うお金のないときは、病院に事情を話して領収書をもらうか、または、病院に委任状(被害者請求をする委任状)を渡して病院から保険会社に請求してもらう方法もあります。
 大きな病院ではこれをやってくれるところが多くなっています。
 (2) 健康保険を使うこと
 交通事故による負傷につき、健康保険を使えるかとの質問をよくうけますが、これは使えます。この点を間違えないようにしてほしい。入院治療費が多額になりそうなときは、最初からこれを使うべきです。
 (3) 医療保護の活用
 もし、被害者が困窮されているときは、ぜひ、役所に相談して医療保護を適用してもらうとよい。しかし、これらの手続きは、かなり時間がかかるものです。
 しかし、加害者側が全くの無資力なら、被害者側でこのような対策を考えるほかはありません。

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