臨時雇が起こした事故と会社の責任
OLのA子さんは買いものの途中で横丁からとび出してきた乗用車にはねられました。彼女のほうも新しい服地に見とれていて注意が足りなかったということも多少はあるようです。
運転していた男はアルバイトで働いていたとかで、しかも休憩時間に私用てせ会社の自動車を使っていたものだという。A子さんは首に傷を負い、あとが残るかもし知れません。
そこで加害者の会社の責任者に面会を求めましたが、あれはアルバイトだとか、無断で私用で乗りまわしていたのだとかいって、なかなかとりあってくれません。自動車はその会社のものであることははっきりしています。裁判はながくなり、とくに損害賠償の裁判はむずかしい問題が多く、やっかいだときいているので迷っています。こんな場合、A子さんは加害者の会社を相手に損害賠償の請求ができるでしょうか。
交通事故は不法行為の一種です。「故意又ハ過失二因リ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ損害ヲ賠償スル責ニ任」じなければなりません。
損害賠償を求めるほうで相手方の故意過失と損害の発生を立証しなければならないので、損害賠償の裁判は時間も手数もかかると一般に思われています。
しかし、交通事故については現在は違います。昭和三〇年に自動車損害賠償保障法(自賠法)ができて、交通事故対策の世論がもりあがり、被害者の立場が強く保護されるようになったからです。すなわち自賠法三条で、自動車の保有者はその運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任があるのです。
すなわち人身事故を起こしたら、文句なしに損害賠償をしなくてはならないのです。そして、その責任をまぬがれるためには、自分のほうで、自己および運転者がその自動車の運行について注意を怠らなかったことなどを逆に立証しなければなりません。被害者のほうでは事故にあったことと損害の額とを立証すればいいのです。
したがって本件でも会社は自動車を保有しているものとして当然事故の責任をまぬがれ得ないわけであり、前記のいいわけはまったく通りません。運転していた男に対しても同時に損害賠償を請求してかまいません。
首に傷を負い、あとが残るのなら慰謝料も普通より多く認められるでしょう。未婚の女性の顔や体は価値が高い。
交通事故の裁判は近年非常に早くなっている。泣き寝いりしてはいけません。弁護士に知人がいなければ、各地の弁護士会の交通事故相談センターに行って実情を話せば紹介してくれます。
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