タクシー事故
タクシー乗車中に運転手の不注意により事故が起き、乗客が負傷した場合は民法709条の要件を満たせば、運転手が不法行為責任を負うことになります。タクシーの運転手は乗客を安全に輸送するという契約を乗客と結んでおり、乗客にケガをさせたということはこの契約に違反し、債務不履行があったということになります。不法行為では被害者の方が加害者に故意過失のあったとの立証責任を負いますが、債務不履行では加害者、つまり債務者の方が自分に故意過失がなかったとの立証責任を負います。そして消滅時効は、不法行為が3年なのに対して、債務不履行は10年ということになります。では負傷した乗客は運転手に対して不法行為、債務不履行責任の両方とも問うことができるかというと、特別な契約関係に原因する債務不履行責任が成立するときは、こちらだけが認められないとする考え方もあります。しかし、現在の支配的な考え方としては両者の責任を問う事ができるとしています。両者の責任はそれぞれ別の要件、効果が定められている異なった制度であることで、両者間の自由な選択を認めることが被害者にとって有利であることなどを理由とします。通常では故意過失の立証責任消滅時効の期間などで被害者が有利に取扱われている債務不履行責任を問うことが多くなっています。

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